豊穣たる熟女たちと:最後の乾杯?

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例の熟女たちと秋葉原駅前の居酒屋に入った。彼女らと飲むのは、気兼ねがいらず楽しいことなので、これまで機会を設けては幾度となくやってきたが、これが最後になるかもしれないと思いながら。というのも、筆者は今月限り、つまり明日限りで職場を去らねばならなくなったからだ。

そのことを話すと、彼女らは一様にがっかりした顔をしてくれた。折角お近づきになれたのに、たった一年でいなくなっちゃうのは残念だわ、というのである。まあ、その言葉にうそはないと思うが、かりにうそがあったとしても、そんな風にいわれるとうれしいものだ。

出会いがあれば別れがあるのは世の習い、まして職場を異動するだけで、この世からいなくなってしまうわけではないから、いつだって会おうと思えば会えるさ。だからそう深刻に考えずに、楽しく飲もう。

こういう訳で、いつもと同じように、四人で乾杯した。T女とY女と筆者は生ビール、M女はウーロン茶だ。M女は折角だからというので、ウーロン茶にほんの少量のアルコールを混ぜて飲んだ。

咽喉越しにビールの冷たさを味わいながら、皆やはり、筆者が突然いなくなることが不審のようだ。なぜこんなに急に異動することになったのかと聞く。それは勤め人の業のようなものだから、わけなんかないよと筆者は答える。また、どんな仕事をやるようになるのかと聞く。いってみなければわからないよと筆者は答える。或は、後任はどんな人と聞く。いづれわかるよと筆者は答える。

そのうち注文した料理が次々と出てくる。看板に魚河岸などと書いてあったので、魚がうまいかもしれぬと期待していたのだが、同じ魚でも干物専門の店であるらしく、干物ばかり食う羽目になった。でも彼女らは、ハタハタやホッケの干物をうまそうに食っていたから、そうがっかりするほどでもない。

アルコールが入り、腹が満ち足りてくると、自然舌のほうは滑らかになる。各々身辺のことから始まって、趣味や遊びのこと、果ては世の中を吹きぬける冷たい風のことなどを語り合う。熟女たちのことだ、政治を論ずるような野暮なことはしない。

T女はこの夏休みを利用して、自らの還暦祝いに、台湾へ夫婦旅行をするそうだ。筆者も一昨年に仲間と台湾旅行をしたことがあるので、その折のことなど話題に上げた。Y女とM女には目下旅行の計画はないらしい。そのかわり別の方面で、気晴らしの種にはこと欠かない。人間気晴らしができないようでは、生きる楽しみも半減するというものだ。

こんな調子で歓談しているうちに、あっという間に時間が過ぎた。T女などは生ビールを四杯も飲んで、いい顔色になっている。普段はアルコールを飲まないM女も、ウーロン茶にほんの少しだが混ぜた焼酎が利いたと見えて、機嫌のいい顔色をしている。筆者も多少飲みすぎたようだ。何しろ生ビールを二杯に芋焼酎のお湯割を三倍も飲んだのだから。一方Y女は、酔っても顔色が変わらないタイプとみえて、それなりに飲んだにかかわらず、平然とした顔をしている。

ともあれ、うまい酒が飲めた。おかげで心地よく酔うことができた。

これを最後の乾杯などと思わないで、機会をつくってまたやりましょう、こういあって解散した次第だ。





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このページは、が2009年6月30日 19:20に書いたブログ記事です。

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