杜甫の五言律詩「畫鷹」(壺齋散人注)
素練風霜起 素練 風霜起る
蒼鷹畫作殊 蒼鷹 畫作殊なり
竦身思狡兔 身を竦(そばだ)てて狡兔を思ひ
側目似愁胡 目を側てて愁胡に似たり
絛鏇光堪摘 絛鏇 光摘むに堪へたり
軒楹勢可呼 軒楹 勢ひ呼ぶべし
何當擊凡鳥 何(いつ)か當(まさ)に凡鳥を擊ちて
毛血洒平蕪 毛血 平蕪に洒(そそ)ぐべき
白絹に風霜が起こっているように見えるのは、墨で描かれた鷹の勢いのせいだ、身をそばだててずるがしこいウサギを追い、目をそばだてたさまは異国の動物そのまま
足にはめられた鎖はきらりと光り、いままさに軒から飛び出さんばかりだ、いつか必ず凡鳥を撃って、その羽や地を荒野に飛び散らせるに違いない
杜甫は、絵を見て詠んだ詩、詠画詩を生涯に多く残している。これはその中でも最も初期のもの、30歳代初期に書いた詩である。
墨で描かれた鷹が、あまりにも迫真性を帯びているので、キャンバスを飛び出して大空に羽ばたこうとしていると、杜甫は感嘆をもって歌っている。
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