イングランド中部バーントウッド近くの農園から、中世のアングロ・サクソンの秘宝 Anglo-Saxon Hoard が掘り出された。その財宝の一部をナショナル・ジオグラフィックが写真つきで紹介している。
上の写真は、金製の皿の破片で、魚を銜えた二頭の鷲が描かれている。このほかガーネットを埋め込んだ刀の鞘の飾り物や、柄の装飾など、断片類も合わせると発掘された埋蔵品の数は1300点以上になる。殆どは金や銀で作られた飾り物だ。
これらを発掘したのは、テリー・ハーバートさんという古物収集家。イギリス中を歩き回っては金属探知機などを用いて、地中に眠っている宝物を探してきた人だ。イギリスには太古の昔に秘匿された宝物が、国中に眠ったままでいるというのが、ハーバートさんの信念だ。
探し出した宝物を早速ロンドンの専門家のもとに運び込んだところ、13世紀以上前(7世紀頃)に作られたものと判明した。その頃のイギリスはまだ全土が統一されておらず、多くの王が群雄割拠する時代だった。そうした王の一人がこの財宝を埋蔵したのではないかと推測された。
財宝の保存状態は非常によい。それ以上に感銘深いのは、装飾に施された技術だ。7世紀頃までのイギリスは暗黒の時代と呼ばれ、文明とは無縁のように見られていたが、ここに見られる技術は、その偏見を吹き飛ばすくらいに洗練されたものだと、専門家団体のケヴィン・リーヒー氏は語っている。
ところで7世紀の日本は飛鳥時代にあたる。その頃の日本は飛鳥寺を始め巨大寺院を建造するほどに建築技術も進んでいたし、銅鏡や銅鐸に見られるように、手の技も相当進んでいた。また大化の改新を経て全土を統一する強大な王権も成立していた。政治的にも技術的にも、イギリスよりは進んでいたわけだ。
日本はこうした文明を主に中国大陸から教えられた。イギリスはローマ文明から多くのものを吸収したに違いない。
今後こうした財宝の分析が進めば、ヨーロッパ文明のなかにおけるイギリスの位置づけが、更に深く究明されていくことだろう。それこそ1300年間も地中深く眠っていた秘宝が、今日に語り掛けたいところだろうと思う。
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