日本が生んだベースボールのスーパープレイヤー・イチローが前人未到の偉大な記録を達成した。2001年に大リーグデビュー以来、今年まで9年間連続の200安打。大リーグ140年の歴史の中で誰にも成し遂げ得なかった偉大な記録だ。一人のファンとして心から喜びたい。
喜びの余りに早速MLBの公式サイトにあたってみたところ、イチローの快挙をトップで報道し、その瞬間を撮影したヴィデオまで載せていた。MLBはまた、イチローは確実に殿堂入りするだろうと、異例のコメントまで出している。
大リーグは長い歴史の中で数々の偉大なプレイヤーを生んできた。イチローの今回の業績は、その誰と比較しても遜色のない立派なものだ。というのも、野球というハードなスポーツを演ずる選手が、長期間にわたってコンスタントにすばらしい成績をあげ続けるのは非常に困難とされる中で、イチローは自分自身に厳しい試練を課しながら、それをやり遂げてきたからだ。
イチローは9年目の今年、胃潰瘍のために故障者リストに入り、開幕試合に出られなかった。また8月にはふくらはぎに異常を訴え戦列から離脱した。これらのアクシデントによって16試合を欠場したが、イチローの執念はそんなことを吹き飛ばすほど強烈だった。先日はNHKの取材に答えて、日本では130試合で200本安打を打てたのだから、これくらいの欠場で意気消沈してはいられないといっていた。けだしイチローのガッツを感じさせる言葉だ。
実際今年のイチローは例年にも増して絶好調だった。戦列復帰後4月から5月にかけてヒットを量産し、夏までリーディングヒッターを独走、8月には史上二番目の速さで大リーグ通算2000本安打を達成した。この調子だと9年連続200本安打はもとより、三度目の首位打者を期待できるのではないか、筆者などはそう思って、毎日のようにMLBの公式サイトをチェックしていたほどだ。
だが夏場以降伏兵のマウアー(ミネソタ・ツインズ)が現れてイチローとデッドヒートを演じるようになった。マウアーは数年前にもイチローと首位打者争いをして、最後に勝ち残った好敵手だ。筆者がイチローに、今回こそ彼の挑戦を退けるよう願ったことはいうまでもない。だが今の時点で、打率で2分近い差をつけられている。三度目の首位打者は難しいかもしれない。
しかしどんなに偉大なプレイヤーでも、記録を独占するのが難しいのが大リーグだ。あのジョー・ディマジオが56試合連続安打を記録した1941年、彼は首位打者を取れなかった。テッド・ウィリアムズという打撃の天才が彗星のように現れ、ディマジオの行く手をさえぎったからだ。その年のウィリアムズの打率は4割を越える驚異的なものだった。ウィリアムズはいまでも最後の四割打者といわれている。
そのテッド・ウィリアムズが6度目の首位打者になったのは38歳のことだ。またピート・ローズが4000本安打を達成したのは40歳を超えてからだ。イチローにはまだまだがんばり続け、さらに偉大な記録に挑戦してもらいたい。
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