新宿二丁目の盛期高齢者

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日頃懇意にしている老人と久しぶりに飲んだ。場所は江東区内のさる赤提灯。老人行きつけの店らしく、席に着くやおかみが出てきて、懐かしそうな顔をしながら酌をしてくれる。このおかみに向かって、老人は盛んに冗談をいう。なかには卑猥な言葉も出てくるが、おかみは一向意に介しない様子だ。そのさまがなかなか良い。

筆者はこのおかみと会うのは始めてなので、おかみの方ではなにかと気を使ってくれる。連れのご老人に比べればまだお若いようですが、おいくつになられますの。いやいやもうとっくに還暦を過ぎましたから、老人の部類ですよ。でも後期高齢者というにはだいぶ間がありそうですね。盛期高齢者とでも考えてください。こんな調子で会話が始まる。

お勤めはなされてますの? 新宿二丁目の事業所に勤めてます。あら何かで聞いたことのある街ですわ。ホストクラブが集まっていることで知られています、小生の勤務先の周りもホストクラブが軒を連ねていて、ホストを募集する広告がいたるところに張られていますよ。部外者が足を踏み入れると、異様な感じを受けるかもしれませんね。町全体が映画のセットのようで、周囲から隔絶された雰囲気が感じられます。

変わった町といえば山谷や吉原もそうです。小生は何度か足を踏み入れたことがありますが、吉原などは朝から快楽の匂いが立ち込めていますし、山谷は山谷で、時間が止まってしまったような、けだるい雰囲気が充満しています。

どの町にも共通しているのは、活気がないということでしょう。かつては活気があったのでしょうが、ここ数年の不景気でどこもすっかり寂れてしまったのか、歩いていても気の抜けたような空虚感を感じます。

筆者がこういうと、話題は景気のことに移り、さらに先日の選挙のことに及んだ。おかみは、今回の選挙があんな結果になったのは、国民の怒りの現われだという。出口の見えない不況で、みな生活を脅かされ、大変な思いをしていますわ、それに対して自民党は何もしてこなかったんですもの、というわけである。

おかみ自身、長い間自民党の支持者だったが、先の都議選のときから民主党に宗旨替えしたそうだ。今回も、自民党のBさんは、口先ばかりの鶯男で、全然働こうとしないから、民主党の若いAさんの応援をすることにしましたのよ、、とにかく世の中を変えてほしいわと、舌鋒鋭いことをいう。

その応援が効を奏して候補者が勝ったときには、喜びの余り一大自転車パレードを催し、選挙区内をくまなく挨拶してまわったそうだ。このおかみは筆者と同じような年代と見受けたが、筆者に比べればずっと元気に見える。政治家たちはこうした人たちの感覚を大事にせねばなるまい。

おかみの話を聞いていた老人が、いきなり口をはさんだ。そしてテレビの画面に映し出された鳩山さんの顔を指差してこういうのだ。おかみ、鳩山さんの顔を見てごらんよ。ほら額のところが盛り上がってるように見えるだろう。いままではそんなことはなかったのに、近頃急に盛り上がってきたことに気づいたんだ。人間は知恵や煩悩で頭がいっぱいになると、額が盛り上がるものなんだよ。

そういわれて、おかみはしばしの間画面に見入っていたが、そのうちため息をついてこういった。煩悩ではなく、知恵で膨らんだと思いたいわ。その知恵を私たち国民のために使って欲しいわ。





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余談になりますが、もし生きてるとすれば120何歳の祖母は東京で鳩山新首相のお祖父さん、すなわち鳩山一郎首相が紅顔の美少年の頃、鳩山宅へ通い彼の英語の家庭教師をしてました。 そのような訳で、1950年代、鳩山さんの日ソ交渉の新聞ニュースをいつも熱心に読んでいたのを憶えています。自分がかつて教えた人ですから、誰よりも関心があったんだと思います。

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