アルツハイマー病と関わりのある遺伝子が新たに三つ特定された。クラステリン (Clusterin) 、CR1 (Complement Recepter 1) 、PICALMという三種の遺伝子で、イギリスとフランスの研究グループが、それぞれ別個に発見した。
アルツハイマー病に関わりのある遺伝子としてはこれまで、1993年に発見されたApoEというものがあった。しかしApoEだけでは説明できない部分が多いというので、研究者たちは他に同様の役割を果たす遺伝子があるのではないかと推測していたところ、図らずも二つの研究グループが同時に同じ遺伝子にたどりついたというわけである。
この三つの遺伝子は、どのようなメカニズムでアルツハイマー病を発症させるのか。研究者たちは次のように説明している。
まず、クラステリンとCR1は、アルツハイマー病の引き金になる脳内のプラークの生成と深い係わりを持っている。クラステリン自体はプラークの材料となるアミロイド・プロテインを除却する作用を持っているが、それがほかの遺伝子と結びついたりして特定の形態をとると、逆にアミロイド・プロテインを活性化させ、それが脳細胞を死滅させる働きを促すようになる。
CR1は、脳内における免疫作用と深い関係があり、それを通じてプラークの生成を促しているらしい。つまり、アミロイド・プロテインを攻撃対象として認知する免疫システムが、CR1の作用によって妨げられているようなのだ。
これに対してPICALMは、脳内の神経細胞相互間の情報伝達経路を遮断させるような働きをするらしい。
ApoEも含めこれら4種の遺伝子がアルツハイマー病を発症させる割合は、ApoEが20-25パーセント、クラステリンが8-12パーセント、CR1とPICALMをあわせて3-5パーセントということだ。
こうした遺伝子は正常な人にも存在している。だからこれらの遺伝子があるからといって確実にアルツハイマー病にかかるわけではない。それらの遺伝子の形態が変化したり、ほかの遺伝子と結びついたときに始めて、上述したようなメカニズムを引き起こすということだ。
ともあれ発症に係わりのある遺伝子が多く特定されていけば、病気の治療技術も格段に進化していくに違いない。
(参考)Breakthrough Discoveries of Alzheimer's Genes By Alice Park NYT
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