キリンと人間の共存

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アフリカの草原地帯に生息している野生動物の多くが絶滅の危機にさらされている中で、キリンもまた例外ではない。ここ10年の期間に限っても、14万頭から10万頭まで激減した。この勢いだと、彼らが地球上から姿を消すのは時間の問題だ。

そんな中でひとつだけ、例外的な動きがある。キリンには七つの亜種があり、それぞれ西アフリカの海岸地帯から内陸部にかけて広がる草原地帯に生息しているが、そのうちニジェールを中心に生息している Giraffa camelopardalis peralta という種類のキリンは、10年前に50頭まで減っていたものが、今年には200頭まで回復したというのだ。(上の写真:AP提供)

これには人間の側の相応の努力があった。ニジェールが国を挙げてキリンの保護に乗り出し、キリンとの共存を目指して、さまざまな手を打ってきたのだ。

キリンは現地人にとっては食肉用として、また皮革を始め生活必需品の材料として、長い間狩の対象となってきた。キリンはほかの動物に比べ、狩をしやすい生き物なのだ。政府はこれに対して、キリン狩猟を重い罰則を以て禁止した。それと平行して、キリンのための居住区を定めて、食料への配慮など、何かとキリンを保護してきた。居住区といっても、キリンだけの隔離された空間ではない、人間の住む場所でキリンも生きていけるような配慮をすることによって、キリンと人間との共存を目指したのだ。

その結果、1996年以降、ここのキリンの数は毎年12パーセントづつ増えていったのだ。その間、他の野生動物はドラスティックが減少を見せていたわけである。

キリンが順調に増えた理由のひとつは、天敵がいないことだった。皮肉なことに、キリンの天敵だったライオンや豹などが、密猟によって根絶やしにされていたからだ。

またニジェールの草原地帯は比較的緑が保存され、キリンの食料である草木類が豊富だった事情もある。

しかしキリンの数の増大につれ、今後果たしてどれだけの数の個体を養っていけるのか、新たな悩みも生じているという。キリンのために定められた居住区がだんだん手狭になってきているのだ。

キリンは10-15頭で群れを作って暮らしているが、生活密度が余り高くなるのを望まないようだ。そのためすでに、飽和状態に近づいた居住区を離れ、周辺の地域へ移動する集団も出てきている。しかし彼らにとって、居住区を離れることは、死ぬことにほぼ等しい。実際隣国へ出て行ったものは、その土地の住人の狩の対象になる場合がほとんどだという。

今後の課題は、人間とキリンとの共存を、ニジェールだけの試みに終わらせず、広い範囲で取り組むことだろう。

キリンはユニークな生き物だ。長い首の先までは6メートルほどの高さになるし、体重は1000キロにも達する。そのわりに敏捷で、時速55キロで走ることができる。また耐久性は駱駝よりも優れており、飲まず食わずで数週間生き延びることができる。

こんな動物をこの世から絶滅させてしまうのは、非常に残念なことだ。

(参考)W. Africa's last giraffes make surprising comeback By Todd Pitman





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このページは、が2009年11月11日 20:07に書いたブログ記事です。

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