月夜 杜甫

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杜甫の七言律詩「月夜」(壺齋散人注)

  今夜鄜州月  今夜 鄜州の月
  閨中只獨看  閨中 只獨り看る
  遙憐小兒女  遙かに憐れむ小兒女の
  未解憶長安  未だ長安を憶ふを解せざるを 
  香霧雲鬟濕  香霧 雲鬟濕ひ
  清輝玉臂寒  清輝 玉臂寒からん
  何時倚虛幌  何れの時にか虛幌に倚りて
  雙照淚痕乾  雙び照らされて淚痕乾かん

今夜鄜州の月を、妻はひとりで見ていることだろう、遥かに哀れに思うのは、小さな子供たちが、父のいる長安のことをまだわからぬことだ

香霧に妻の黒髪は潤い、月の光を受けて肌寒い思いをしているだろう、いったいいつになったら二人して虛幌に寄りかかって、ともに月を見ながら涙の乾く日が訪れるだろうか


長安で幽囚されていた杜甫が、鄜州に置いてきた妻子を思いやって歌ったもの。長安に連れてこられて最初に書いた詩だともいわれる。杜甫の詩の中でも、最も名高いもののひとつだ。それは素朴な家族愛が、素直に歌われていることによるのだろう。

現にひとりでとらわれになっている身も、想像の中では妻と二人でいることができる。この想像がいつか現実となるとき、いま流している涙も乾くことだろう。


関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説





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このページは、が2009年11月19日 19:11に書いたブログ記事です。

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