猫のシチューは残酷か

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イタリアで大人気の朝のテレビ料理番組が珍妙なレシピを紹介し、国を挙げて大騒ぎになっているそうだ。77歳のホスト役ベッペ・ビガッツィ Beppe Bigazzi さん(上の写真:AFP提供)が、猫の肉のシチューはおいしいですよと、台本にないことをしゃべったからだ。

ベッペさんによれば、トスカーナ地方では猫のシチューは伝統料理のひとつであり、彼自身何度も食べたことがある。猫を殺して皮を剥ぎ、その肉を清流の流れにさらしておくと、肉が白っぽくなって味もよくなる。それでシチューをこしらえると、とてもうまいのだそうだ。

この話を聞かされたパートナー役の女性はびっくり仰天した。驚いたのは彼女だけではない。この番組を放送した国営テレビ局もベッペさんの発言を問題視して、彼に無期限出演停止の制裁を課した。国の役所の高官もわざわざ声明を出して、ベッペさんの発言は動物愛護の精神に反する残酷な内容だと非難した。

ベッペさん自身は、自分がなぜ非難されなければならかいか、合点がいかないようだ。猫のシチューはトスカーナでは誰でも食べているのだし、今でもそれを非難するものはいない。第一ウサギや馬の肉は食べてもよく、猫はだめだという理由はないだろうというのだ。

たしかにウサギのパイはイタリア人には大人気だし、馬の肉はイタリアのたいていの肉屋で売っているそうだ。(ウサギのパイはマザーグースの歌にも出てくるから、イギリス人も大好きに違いない。)

政府の高官は、猫をうさぎと同列に扱うのはナンセンスだという。ウサギは、牛や鶏やあひるや魚類と同じく、人間によって肉を食べられるのが神の定め給うた運命である。これに対して猫は、人間のペットとして人間によって愛玩されるように定められている。だから人間が猫の肉を食べるのはよくないという理屈だ。

この理屈に対してベッペさんは、スマートなイタリア人で、猫の肉を食べたことのないものはいないはずだ、猫は究極のダイエット食品なのだと、むなしい反論を繰り返しているそうだ。

動物のうち何は食べてもよく、何は食べてよくないか、その基準を決めるのはなかなか難しい。日本人は昔から伝統的に鯨の肉を食ってきたが、西洋の鯨好きな人々の目には、残酷な行為だと映る。猫についていえば、日本人は食うことはしないが、その皮を剥いで三味線の材料にしている。これも猫好きの連中には残酷な行為と映るかもしれない。

ともあれベッペさんは舌をぺろりと回転させたおかげで、当分動物愛護論者たちから集中攻撃を浴びることになりそうだ。





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このページは、が2010年2月22日 20:55に書いたブログ記事です。

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