チリの大地震

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先日のハイチの大地震に続きチリでも大地震が起きた。その規模はマグニチュード8.8というから、滅多に起こらぬ巨大地震といってよい。エネルギーレベルでいうと、ハイチの500倍ものすごさだ。だがその割に被害はメチャクチャなものにはならなかった。まだ完全な統計は出ていないが、死者の数はハイチの場合の22万人に対し700人台、倒壊したビルもハイチに比べればずっと少なかった。

ハイチとチリと、この二つのケース間で明暗を分けた要因はいくつかある。

まず地震に対する備えだ。チリは1960年にマグニチュード9.3という世界の観測史上最大の地震に見舞われ甚大な被害を蒙った経験を持つ。そのため地震の再来に備えて、国を挙げて対策を講じてきた。建物の耐震構造の強化や、人々の地震に対する心構えなどについて、満を持しての取組をしてきた。

ところがハイチの場合には大きな地震に見舞われた経験がほとんどない。過去に起きた大地震は実に250年前の出来事だ。だから国民の地震に対する意識が低く、政府も建築構造の誘導などを行ってこなかった。今回の大地震が起きたとき、ポルトープランスのほとんどの建物が崩壊する一方、国民はどうしてよいかわからぬまま、適切な非難をすることも出来なかった。それが被害の拡大につながった。

地震後の対応についても、両国の間には大きな差がある。ハイチでは、地震後政府はまるで機能しなかった。大統領もしばらく消息を絶ち、国民に対してメッセージを発したのはまる一日たってからだ。国民は深刻な情報不足の中、復興に向けての適切なスタートを切れなかった。

チリでは政府関係機関を始め主要なビルは倒壊することがなかったため、政府は機能しつづけることができた。国民への情報提供や復興に向けての準備など適切な対応をすばやく始めたのである。だから国民は、政府を信頼できることで、無用な不安から開放されたといえる。

両国の間でこんなにも大きな差がでたのは、国力の違いにもよる。ハイチは世界でも有数の貧しい国で、震災対策にまで手が届かないというのが現状だ。それに対してチリは、南米でも経済水準の高い国だ。しかもその高い経済力を震災対策のために活用しようとする意識が確立している。

こう見ると、地震は天災という以上に人災であるということを改めて感じさせられる。

なお上の写真(AP提供)は震源地に近いコンセプション市内の倒壊したビル。根こそぎ浮き上がっているのがわかる。





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チリの津波の余波が日本の三陸に届いたところをテレビで見ました 威力のすごさが改めてわかった

津波のすごさが印象的でした 死者の数は津波によるもののほうがずっと多かったのです

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