ヴァレンタイン A Valentine:エドガー・ポーを読む

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エドガー・ポーの詩「ヴァレンタイン」A Valentine(壺齋散人訳)

  彼女のためにこの詩は書かれた 
  レダのように賢い彼女の目なら
  ここに自分の名前を探しあてるだろう
  凡庸な読者の目には隠されたところから

  行間を丹念に探すのだ
  そこに護札のような宝物が潜んでいる
  それを探し出して胸に架けるのだ
  些細な点まで見逃してはならぬ

  でなければ決して報われることはない
  とはいえゴルディアの結び目があるわけでもない
  その結び目は剣でなければ解けないが
  これは仕組みを見抜けば解けるのだ

  目を光らせて覗き込んでいる紙片の上に
  ある言葉が書かれているのだ
  それは詩人によってささやかれる言葉
  詩人自身の名前でもある言葉

  その文字列はみっつからなる
  ピント・メンデズ・フェルナンデスのように
  それは真実と同義の言葉だ
  謎ではないが 謎を解くように心して解け


Enigma 同様、この詩のなかには、人名が隠されている。一列目の一番目の文字、二列目の二番目の文字、三列目の三番目の文字といった具合に、法則にのっとって文字を取り出して並べると、Frances Sargent Osgood という人名が現れるのだ。

この名前はポーがひそかに愛した女性の名らしい。彼女は他の男の妻であったが、ポーにひそかに心を寄せていたようだ。その女性に対して、ポーはあからさまに振舞うことができなかったかわりに、このような不思議な手紙を贈って、心を慰めていたとも考えられる。

詩の題名は、ヴァレンタインの日に贈るという意味だろうか。


A VALENTINE.

  FOR her this rhyme is penned, whose luminous eyes,
   Brightly expressive as the twins of Lœda,
  Shall find her own sweet name, that, nestling lies
   Upon the page, enwrapped from every reader.

  Search narrowly the lines! -- they hold a treasure
   Divine -- a talisman -- an amulet
  That must be worn at heart. Search well the measure --
   The words -- the syllables! Do not forget

  The trivialest point, or you may lose your labor!
   And yet there is in this no Gordian knot
  Which one might not undo without a sabre,
   If one could merely comprehend the plot.

  Enwritten upon the leaf where now are peering
   Eyes scintillating soul, there lie perdus
  Three eloquent words oft uttered in the hearing
  Of poets, by poets -- as the name is a poet's, too.

  Its letters, although naturally lying
   Like the knight Pinto -- Mendez Ferdinando --
  Still form a synonym for Truth. -- Cease trying!
   You will not read the riddle, though you do the best you can do.


関連サイト:英詩と英文学エドガー・ポー






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