財政破綻から政府による国民への犠牲要請に発したギリシャの騒動は、ついに暴動にまで発展した。膨大な数のデモ隊と警官隊とが派手に衝突する場面が、マスメディアやインターネットを通じて、連日オンラインで流されている。
そのあおりを食ったか、世界中で株安が広がり、あらたな金融不安までささやかれるようになった。ギリシャはいったいどうなっているのか、このままでは国家財政が深刻な破綻を迎え、ひいてはEUの金融秩序が破綻するのではないか、そんな懸念が世界中を駆け巡っている現われだといえる。
ところが当のギリシャの民衆は、国の財政破綻などどこ吹く風、あくまでも自分たちの生活防衛を旗印に、政府を相手に派手なちゃんばら劇を演じている。
ギリシャ人は、当今の文明人の中でも、とりわけ血の気が多いようだ。2008年にも、15歳の少年が警察官に射殺されたことがきっかけになって、大規模の暴動が起こった。今回の暴動はそれを上回るすさまじさのようだ。
この暴動騒ぎの中から、ギリシャ民衆にとっての守護神が現れたといって、いま熱い注目を集めているものがいる。人間ではなく一匹の犬である。この犬が民衆と警官隊が衝突する修羅場に現れて、警察官を吠えたてながら、民衆を鼓舞しているというのだ。(上の写真:AP提供)
この犬は早速ギリシャ人の心を捉え、いまやジャンヌ・ダルクなみの英雄になった。インターネットではこの犬を旗印にするサイトが次々と現れ、犬の声を通じてギリシャ民衆の正義を訴えるものが続出している。それらのサイトでは、この犬を Rebel Dog, Riot Dog, Protest Dog などと称し、畜生ながらギリシャ人の反逆精神を体現したものだとして、その英雄的な行為を讃えている。
2008年の暴動の際にも、同じような犬が出現して、民衆の心をつかんだことがあった。その犬はカネロと名づけられて、民衆とともに戦う様子がドラクロアの描いた自由の女神のようだと讃えられたが、不幸にしてすぐに死んでしまった。
今回現れた犬はどうやら雑種の野良犬のようで、まだ名前は付けられていないというが、いづれカネロの再来として、相応しい名前をもらい、ギリシャ民衆の心の中に長く生き続けることになるかもしれない。
ところで日本には煩悩の犬という言葉はあるが、反逆の犬という言葉は無い。日本人は犬が反逆するものとは考えていないからだ。
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