ギリシャの財政破綻とユーロ圏の経済危機

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深刻な財政破綻に陥ったギリシャに対して、ユーロ圏の諸国が協調融資に踏み切った。その額は三年間で総額1200億ユーロ(約15兆円)、うち3分の2はユーロ圏の15カ国が、残りの3分の1はIMFが負担する。

ギリシャといえば人口1100万程度の小さな国だ。その国が財政破綻したとしても、世界経済にたいした影響は及ばないだろうとも思えそうだ。だがそんな小さな国の財政破綻でも、一国限りの現象にとどまらないのが、今日の世界経済の実態だ。対応を間違えればリーマンショックの二の舞になりかねない、そんな危機感が今回のユーロ圏の決断を促したといえる。

ギリシャの財政危機は、なぜユーロ圏全体の憂慮の種になるのか。それは一政府の財政危機が世界的な金融不安に発展しかねない要因を抱えているからだ。そこまでいかなくとも、ユーロ圏が全体として沈没する可能性がある。

まずギリシャ政府の財政危機が深刻化するにしたがって、ギリシャ政府が発行した国債の価格が暴落する可能性が高まる。それを憂慮する投資家たちがいっせいに資金を引き上げる。その結果信用不安が高まって、その影響はギリシャを越えてユーロ圏全体に広がる。それだけではすまないかもしれない、リーマンショックに始まった世界信用危機が再現しないともかぎらない。

こうしたわけで、ギリシャのように小さな国の出来事でも、世界経済に甚大な影響を及ぼすような仕組みが作られてきているのだ。

イギリスを除くヨーロッパの主要諸国は、通貨を統合してまで、緊密な経済共同体の道を選んできた。その結果ユーロ圏は、アメリカと肩を並べる経済圏にまで成長した。域内諸国にはこの統合を経済成長のバネにしてきた国も多い。

だがユーロ圏の拡大に伴って、ギリシャのような不健全な財政体質の国まで加わることとなり、それがユーロ圏全体の足を引っ張るようになってきた。ギリシャはその典型だが、ほかにもスペインやポルトガルなど、第二のギリシャになりかねない国もまだある。

ギリシャの財政危機をもたらしたとされる財政赤字の規模はGDP比13.6パーセントである。スペインは11.2、ポルトガルは9.4パーセントだ。一方日本の財政赤字(国債発行額)はGDP比9.3パーセントだが、政府債務残高の総体で見ると、ギリシャの115パーセントに対して日本は189パーセントである。

日本政府の借金体質が如何にすさまじいかよくわかろうというものだが、それがギリシャのように問題化しないのは、この借金の殆どを国民自らが負担している(日本政府債の大部分が国内で買われている)からだ。

ギリシャの場合は借金の相手は外国資本が殆どだ。かれらは投資先が危ないとなればすぐさま資金を引き上げる。その結果国債の価値はただ同然となり、ギリシャ政府に資金提供してきた企業や金融機関が深刻な危機に陥る、こうした構図が容易に見て取れるのだ。

それにたいして日本国民は政府と一蓮托生、すこしくらい危なくなっても資金を引き上げるようなことはしない。だが日本だっていつまでも今のまま続けていられる保証はない。





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このページは、が2010年5月 4日 22:18に書いたブログ記事です。

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