東京墨田区に建設中のスカイツリーが、いよいよ第一展望台まで立ち上がった。(上の写真:Wikipedia より)そこで多くの見物客が押しかけるようになり、この連休中にもたくさんの人が見に来たそうだ。工事が順調に進めば来年中には完成し、再来年の春には電波塔としての機能を開始することになる。
筆者も先日、高さが東京タワーを抜いたと話題になった頃に訪れた。といっても、所用で押上の駅を降りたときに、遠目に眺めただけだったが、それでも結構迫力を感じた。だが東京タワーの曲線美を見慣れた目には、寸胴の姿が煙突を思わせるようで、あまり感心しないデザインだと思ったものだ。
ところがこの建物は、実際に煙突をイメージして作られているのだそうだ。監修者の一人でデザインを担当した澄川喜一氏によれば、昔千住にあったお化け煙突を念頭に置いているという。
お化け煙突は4本からなる煙突群で、それが見る角度によって、3本に見えたり、2本にみえたり、全体が固まって1本に見えたりした。若い人にはわからぬかも知れないが、筆者のような年代のものには懐かしい眺めだった。
スカイツリーは単体の塔であるから、2本に見えたり3本に見えたりはしない。そのかわりに見る角度によって、輪郭の線が変化して見えるという。一方向だけから見ていてはわからぬが、塔の周りをぐるりと歩きなが見ると、この変化が良く見えるらしい。
これは基底部と上層部とが異なった形をとることから起こる現象だという。基底部は正三角形だが、上層部は円形である。したがって三角形が円形へと溶け込んでいくところに、独特のたわみが生じる。それが外側から見る人には、複雑な線の変化として映る。
この塔は高さが634メートルにもなる。東京タワーより300メートルも高い、完成時点では世界一の高さだ。そこで気になるのは、どのような耐震構造がとられているかということだ。
参考にしたのは法隆寺の五重の塔だそうだ。五重の塔には太い芯柱が通っていることで有名だが、それが建物の耐震性を大いに高めている。スカイツリーも中心部に直径10メートルの芯柱を通すことで、同じような耐震性能を確保しようとするものだ。
芯柱と外側の構築物を完全には一体化せず、その間に遊びを持たせる。こうすることで、揺れの圧力が分散され、建物の耐震性は高まるという理屈だ。
古代の日本人の知恵が、千数百年の時空を超えて、現代の建築技術に生かされているわけだ。
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