ハワイでは来年の7月からフカヒレの料理が食えなくなる。州法によって、フカヒレを所有すること自体禁止されるので、売ったり買ったり、また食堂のメニューに加えることができなくなるためだ。法令に違反したものは、初犯で5000-15000ドルの罰金が科せられ、三度目の違反には35000-50000ドルの罰金のほか1年間の禁固刑を課せられる。
この法律の制定にあたっては、ハワイの人口の13パーセントを占める中国人社会から猛反発があったが、フカヒレの材料となるサメ類の絶滅を危惧する環境団体の主張に押し切られた。彼らによれば、いまや世界中で毎年8900万頭のサメがヒレを取るために殺され、その数は今後もすさまじい勢いで増えていくと考えられるから、思い切った保護措置をとらないと、早晩絶滅してしまうというのである。
アメリカ人は映画「ジョーズ」によってサメの恐怖を叩き込まれ、サメを可愛いと感じる人は少ないだろうと思うのだが、中にはサメに親愛感を覚える人もいるらしい。その人たちは、ヒレをとる目的でサメを殺すのは残酷だと感じ、またサメがいなくなることは、海洋の食物連鎖を著しく損なわれることにつながると主張する。
ハワイはアメリカの一州に過ぎないから、いまのところこの措置のインパクトはそう大きくはないと考えられるが、ハワイでの出来事が他の州を動かし、やがては連邦政府がサメの保護に乗り出すことを期待すると、ハワイの環境保護団体はいっているそうだ。
ところで世界中で最も多くサメを消費するのは中国人だ。香港はフカヒレの巨大市場となっており、ある調査によれば世界のフカヒレ取引の80パーセントを握っているという。だからこうした市場を押さえない限り、サメの流通にストップをかけることはできないだろう。中国人はフカヒレをツバメの巣と並んで食文化のシンボルと見ているので、いまのところサメの捕獲抑制ないし禁止に乗り出す意向はさらさらない。
それにしても、ハワイでの新たな措置によって迷惑を被るのは中国人社会だけではないらしい。というのも、ハワイでのフカヒレの最大の消費者は日本人観光者であるとする統計があるからだ。
日本人もフカヒレのスープが大好きだ。そのフカヒレがハワイでは日本の3分の1ないし4分の1の値段で食えるとあって、ハワイ旅行をする際には、フカヒレを食うことが当たり前のようになっているようだ。それがハワイで食えないとなると、フカヒレが好きな人々は香港や広州に流れていくのかもしれない。(上の写真はフカヒレのシチュウ:Wikipedia から)
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