杜甫の七言律詩「江亭」(壺齋散人注)
坦腹江亭臥 腹を坦いで江亭に臥し
長吟野望時 長吟す野望の時
水流心不競 水流れて心競はず
雲在意俱遲 雲在りて意俱に遲し
寂寂春將晚 寂寂として春將に晚れんとし
欣欣物自私 欣欣として物自ら私す
故林歸未得 故林歸ること未だ得ず
排悶強裁詩 悶を排して強く詩を裁せん
腹ばいになってあばら家に臥し、田園を眺めながら詩をうそぶけば、川の水の流れに心をゆだね、雲と同じようにゆったりと時を過ごせる
春が静かに暮れ去ろうとしている、万物はみな自然のままだ、故郷に帰ることが出来ないので、その悲しみを忘れるために詩でも作ろうと思うのだ。
題名の江亭は浣花溪の川のほとりにたつ草堂のこと。その草堂に臥しながら、春が暮れ行くのをのんびりと見送る。だがそんな境地の中にも、故郷を思う気持ちがひしひしと迫ってくる。詩を書くことでその苦しさを紛らわそう、この詩は杜甫のそんな切なさを歌ったものだ。
関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説
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