築地の隠れ家:市場の厨房にて

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M女史からメールがあって、久しぶりにアナゴの仲間たちを集めて一杯やりましょうよということになった。場所は築地場内の「市場の厨房」という店。アナゴの主人S氏の紹介という。そこで勤めがひけた後に、地下鉄に乗って出かけてみた。折から雨がそぼそぼと降っている。どうもこの連中と会うときには雨にたたられることが多いな、もしかしたら雨男あるいは雨女がいるのかな、と思いながら。

当の店は市場の玄関口を抜けた右手の建物の一階にあった。このあたりはこれまでにも何度か歩き回ったことがあるが、こんな店があることには一向気づかなかった。大体築地といえば場外に行くことが多く、場内でも玄関口左手にある食堂街の方向に脚が向くばかりで、こんなところには来たことがない。やはり地元通のS氏ならではの、隠れ家といった趣だ。

とりあえず筆者とM女史に加えF氏がそろったので、三人で乾杯をする。マグロの食い比べを始め料理を何品か頼んだが、いづれも新鮮でしかもボリュームがある。これなら誰しも何度でも来たくなるだろう。

会話はいつもどおりとりとめがない、この日はM女史がいま読んでいるという本が話題になった、姜尚中の「悩む力」という本で、マックス・ウェーバーと漱石を引き合いに出しながら、現代人の苦悩について論じているのだそうだ。そういえば君は学生時代にマックス・ウェーバーを読んでいたのだったね、と筆者が言うと、あらマックス・ウェーバーはいまだに新しいわよ、と女史が身構える。

ぼくの学生時代はマルエン全集を読んでいたなあ。その本をつい最近まで旧宅の書斎に保管していたけれど、先日旧宅を解体するのにあわせて、ごみにしてしまったよと筆者がいうと、女史はこの罰当たりめ、といった顔で筆者をにらんだ。

ところで君が今読んでいる姜尚中だけれど、ぼくはテレビで何度か見たことがあるけど、結構良識がありそうじゃないか、変な日本の学者より、よほど日本を理解しているようにみえるし、と筆者が続けて言うと、M女史は幾分機嫌直しをしてくれたようで、この本をあなたに上げるから、呼んでごらんなさいよといって、その本を筆者に手渡してくれた。やあ、ありがとう、いづれ時間を工面して読んでみるよ。

店内はまだ7時だというのに、超満員だ。肝心のS氏が来るのを待ちながら、次々と出される料理を食っていたが、S氏は何時までたっても現れない。そのうち時間は8時をまわり、店を出なければならないことになった。どうやらM女史は2時間限定で席を借りていたらしいのだ。

携帯電話がやっと通じてF氏がS氏に事情を聞くと、どうも本人は今日の会合を失念していたらしい、いまちょうど新宿で飲んでいる最中だというのだ。でもこれからすぐ駆けつけるからというので、我々三人は新大橋通りに面した寿司鮮という店に入って飲みなおすことにした。

そのうちS氏がやってきて四人になった。S氏はあまり酔った風がしないが、筆者などはもうすっかり出来上がっている。しゃべる言葉にもメリハリがなくなり、瘋癲老人の小言のようになってきた。もともと酒には弱いくせに、ひいた風邪がまだ直らず、だいぶ悪酔いをしたようだ。

こんなわけでこの日は久しぶりに酔いつぶれてしまった次第だ。





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このページは、が2010年6月21日 19:12に書いたブログ記事です。

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