戻ってきたあの人 Son retour:マルスリーヌ・ヴァルモール

| コメント(0) | トラックバック(0)

マルスリーヌ・ヴァルモール Marceline Desbordes Valmore の詩「戻ってきたあの人」Son retour(壺齋散人訳)

  ああ あの人を憎みたい気持ち
  だってわたしの心をもてあそんで
  涙と愛の炎でいっぱいにしたのだもの
  悲しすぎてすぐには治らないわ
  ああ ほんとうに憎みたい気持ち
  あの人のおかげで苦しみばかり
  あの人がいなくならない限り収まらないわ
  あの人がそばにいて
  わたしの名を呼ばれたりすると
  わたしは苦しくてたまらなくなるの

  あの人が戻ってきてキスされると
  あのひとがわたしを求めるてのはわかるけど
  わたしのほうでは隠れたい気分なの
  たしかにあの人にキスされると
  あのひとの愛は感じるのだけれど
  そのうえもう決して去らないなどと
  あのひとはいうのだけれど
  神さま わたしはどうしたらいいのでしょう
  あの人を再び受け入れるべきなのでしょうか
  もう決して去らないといっているひとを


口先ばかりで不実な愛でも、愛してしまったものにとっては、かけがいのない愛だ。そんな悲しい愛を、マルスリーヌは両義的な気持ちで受け止める。理性では馬鹿げた愛に見えても、感性で受け止めれば、自分の存在全体がかかっているような、重い愛なのだ。


Son retour  Par Marceline Desbordes Valmore

  Hélas ! Je devrais le haïr !
  Il m'a rendu le mal de l'âme,
  Ce mal plein de pleurs et de flamme,
  Si triste, si lent à guérir !
  Hélas ! Je devrais le haïr.
  Il m'a rapporté ce tourment
  Qu'avait assoupi son absence :
  Dans le charme de sa présence,
  Dans mon nom, qu'il dit tristement,
  Il m'a rapporté ce tourment.

  Dans le baiser pur du retour
  Lorsque son âme m'a cherchée,
  La mienne en vain s'était cachée :
  La mienne a reconnu l'amour
  Sous le baiser pur du retour.
  Il dit qu'il ne s'en ira plus :
  Quelle frayeur dans cette joie !
  Vous voulez que je le revoie,
  Mon Dieu ! Nous sommes donc perdus :
  Il dit qu'il ne s'en ira plus !


関連サイト:フランス文学と詩の世界 マルスリーヌ・デボルド・ヴァルモール





≪ 贈り帰された花 La fleur renvoyée :マルスリーヌ・ヴァルモール | 詩人の魂 | あの人を見て Regarde-le:マルスリーヌ・ヴァルモール ≫

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://blog.hix05.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/2418

コメントする



アーカイブ

Powered by Movable Type 4.24-ja

本日
昨日

この記事について

このページは、が2010年7月 8日 20:24に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「遣悶奉呈嚴公二十韻:杜甫を読む 」です。

次のブログ記事は「豊穣たる熟女たちと銀座を歩く」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。