今夏の気象異変は日本だけの現象に限らず、世界的な異変だそうだ。ロシアでは暑さを逃れようとして多くの人々が水死していること、アメリカ・カンザス州の家畜たちが熱中症で次々と死んでいること、これらは先稿で紹介したところだが、このほかヨーロッパからロシア東部、シベリア西部で猛暑が続き、中国の長江沿いでは大雨で大洪水が起きる一方、南米では記録的な寒波が起きている。まさに地球規模の気象異変といえる。
その状況を朝日新聞が分析して紹介している(上の図:7月25日朝刊)。地図で赤く表示されているところは高気圧が発達しているところ、赤く表示されているところは反対に低気圧が活発なところだ。例年に比べると高気圧の発生箇所が北極寄りに移動し、低気圧の発生箇所が赤道に近づいていることがわかる。
この原因は、偏西風の大蛇行にあると朝日新聞は推測している。上の図からわかるとおり、この夏の偏西風は北極寄りに北上し、しかも大きく湾曲している。湾曲してせり出した部分には高気圧が発達し、そこから巨大な熱源が周囲に供給されている。これが北半球の猛暑をもたらしている。
また中国の大洪水は、インド洋の水温上昇が大きな要因となっている。インド洋の水温上昇で上昇気流が起こり、それに伴って膨大な水量が上層に補給される、それがフィリピン付近に移動して高気圧を生むと、暖かく湿った風が中国南部から日本付近の低気圧を刺激して大雨をもたらす、というメカニズムだ。
南半球での低温化も、やはり偏西風の影響だ。今夏の南半球の偏西風は赤道よりにぐっと北上しているのが特徴だが、それにともなって南極の冷たい空気が引き込まれ大寒波をもたらしていると考えられる。
ともあれ、ロシアの猛暑は130年間の観測史上最悪の事態で、水死者の数はこれまでに2000人を超えた。暑さを逃れて水の中に入る人が激増しているためだ。
中国南部では6月中旬から大雨が降り続き、これまでに洪水などにより、743人が死亡、367人が行方不明になったのを初め、1億2000万人の人々が被災した。2009年に完成したばかりの三峡ダムには、膨大な水が流れ込み、ダム決壊の可能性も心配されている。
一方南半球の寒波では、少なくとも200人以上の凍死者がでるなど、いままでなら考えられないような事態が起こっている。
これらの現象の背後に、地球温暖化の影響があることはいうまでもない。
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