カストロ、ビルダーバーグ Bilderberg を語る

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老いて猶意気盛んなカストロ(84:上の写真はAP提供)が、ビルダーバーグ Bilderberg について語った。とはいっても自分の手で事細かに論じたというのではなく、リトアニア生まれの研究者ダニエル・エストゥーリンが2006年に刊行した著作から自分なりに抜粋引用した文章を、キューバ共産党の機関紙に載せたというものだ。

ビルダーバーグとは、オランダのビルダーバーグ・ホテルを根城に、年に一回開かれる非公式の集まりのことで、ヨーロッパ諸国とアメリカから、時代を代表する人物たちが集まって、二・三日間にわたり、自由な議論をするという催しだ。非公式な催しながら、世界の政治的・文化的な動向に大きな影響を与えてきた。

エストゥーリンの著作 "The Secrets of the Bilderberg Club," は、この不思議な催しについて、参加者や議論の性格、現代の動きに及ぼした影響などについて、分析したものだ。いままでこのような試みがなかっただけに、きわめてタイムリーな業績だと、多くの研究者から高い評価を受けた。

この催しは今日では、左翼からも保守的勢力からも、現代の政治的・思想的動向に最も大きな影響力を振るうものとして、認められるに到っているだけに、今後ともその内部に踏み込んだ、詳細な分析が望まれるところだ。

だからいま自分がこれを取り上げるのには、それなりの理由があるのだと、カストロは言いたいのかもしれない。

だがカストロの取り上げ方は、幾分公正さを欠いているかもしれない。彼自身は自分の意見を書くことはないのだが、引用する文章のほとんどは、アメリカの対外政策を批判したように受け取れるものだ。それも文脈を無視して引用されているようなので、単なる憶測も断定のように断固と響いて聞こえるといった具合だ。

一例を挙げれば、最近起きた韓国哨戒艦の沈没事件はアメリカのでっち上げに違いないとか、欧米で大規模なロックコンサートが開かれる際には、必ず民衆の政治的不満をそらそうとする為政者の思惑があるといった調子だ。

こんな調子であるから、カストロの文章にはあまり学問的な価値はないといってよいが、彼が老いて猶意気盛んであることを、確認するよすがとはなるかもしれない。


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コメント(1)

ビルダーバーグ についての記事を読まさせてもらいました。
昨日のキューバ機関紙グランマでこの名前がロックフェラーと一緒に並んでいたので、てっきり大企業の名前かと思っていましたwが誤解を無くすことができました。ありがとうございます
カストロさんがビルダーバーグ について言及されていることをご存知ということはグランマを読まれているからなのでしょうか?カストロのニュースはこっちではそんなに詳しく報じられないので情報源が少し気になりました
確かに先月のインタビューで韓国哨戒艦について独自の仮説を言われたときは、さすがにビックリしましたが、80すぎのカリブの小国の爺さんが言われているだけなので大目に見てあげてもいいのではないでしょうかw?日本についても鳩山首相の辞任問題についてアメリカの圧力があったと言っていますし、沖縄についても独自の見解を述べられていましたねw
韓国哨戒艦については根拠のない話ですが、過去のアメリカの戦争の介入の手法(トンキン湾事件やメイン号事件などなど)を考えればあり得なくもない話ではないでしょうか?韓国哨戒艦については何の証拠もありませんがw

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