女の手紙 Une lettre de femme :マルスリーヌ・ヴァルモール

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マルスリーヌ・ヴァルモールの詩「女の手紙」Une lettre de femme(壺齋散人訳)

  わたしだって知ってるわ 女が手紙を書くものじゃないなんて
  でも書いてしまうのよ
  遠くにいてもあなたには私の心を読んでほしいの
  だからわたしのほうからお便りするの

  わたしが書くのはあなたのことばかりよ
  とてもすてきなことばかり
  月並みなことばだって 真心がこもってれば
  新鮮に聞こえるでしょ

  あなたが喜んでくれたら それでいいの
  それだけでもうれしいの
  手紙と一緒にわたしも あなたのところに飛んで行ったような
  気がするのよ

  ツバメたちがあなたの周りを飛んだりしても
  気をとられないでね
  だってあなたのところに真心込めて飛んでいくのは
  わたしだけですもの

  でもあなたは行ってしまう 何もかもいなくなってしまう
  光も花々も
  美しい夏は過ぎ去って わたしはただただ嵐のような
  涙にくれるばかりなの

  この世で出会えるのが希望と不安だとしたら
  くよくよするのはやめましょう
  与えられたものを受け取ることにしましょう
  わたしには涙 あなたには希望

  わたしはあなたの苦しむのを見たくない
  それほどあなたに首っ丈なの
  あなたにもわたしの苦しみをわかって欲しい
  あなたを愛することの切なさを


マルスリーヌ・ヴァルモールの作品のなかでも、ヴェルレーヌがもっとも優れていると評価した一篇。

女が男に手紙を書くのは、はしたない誘惑行為だとされていた時代に、マルスリーヌは男に手紙を書かないではいられなかった。なぜなら恋に目覚めた女にとって、自分で書いた手紙を男に読んでもらうことは、自分の心を理解してもらう上で、最上の方法であったのだ。


Une lettre de femme

  Les femmes, je le sais, ne doivent pas écrire ;
  J'écris pourtant,
  Afin que dans mon coeur au loin tu puisses lire
  Comme en partant.

  Je ne tracerai rien qui ne soit dans toi-même
  Beaucoup plus beau :
  Mais le mot cent fois dit, venant de ce qu'on aime,
  Semble nouveau.

  Qu'il te porte au bonheur ! Moi, je reste à l'attendre,
  Bien que, là-bas,
  Je sens que je m'en vais, pour voir et pour entendre
  Errer tes pas.

  Ne te détourne point s'il passe une hirondelle
  Par le chemin,
  Car je crois que c'est moi qui passerai, fidèle,
  Toucher ta main.

  Tu t'en vas, tout s'en va ! Tout se met en voyage,
  Lumière et fleurs,
  Le bel été te suit, me laissant à l'orage,
  Lourde de pleurs.

  Mais si l'on ne vit plus que d'espoir et d'alarmes,
  Cessant de voir,
  Partageons pour le mieux : moi, je retiens les larmes,
  Garde l'espoir.

  Non, je ne voudrais pas, tant je te suis unie,
  Te voir souffrir :
  Souhaiter la douleur à sa moitié bénie,
  C'est se haïr.


関連サイト:フランス文学と詩の世界 マルスリーヌ・デボルド・ヴァルモール





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このページは、が2010年8月20日 19:56に書いたブログ記事です。

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