杜甫の七言律詩「白帝城の最高樓」(壺齋散人注)
城尖徑昃旌旆愁 城尖り徑昃(かたむ)きて旌旆愁ふ
獨立縹緲之飛樓 獨り立つ縹緲たる飛樓に
峽坼雲霾龍虎臥 峽は坼け雲は霾(つちふ)り龍虎臥す
江清日抱黿鼉遊 江は清く日は抱く黿鼉(げんだ)の遊ぶを
扶桑西枝對斷石 扶桑の西枝斷石に對し
弱水東影隨長流 弱水の東影長流に隨ふ
杖藜歎世者誰子 藜を杖つき世を歎く者は誰が子ぞ
泣血迸空回白頭 泣血空に迸って白頭を回らす
白帝の城は尖り、そこへいたる道はうねうねとして、旗がものがなしくはためいている、自分はこの縹緲たる飛樓に独り立っている、峽は裂けて雲は土の雨を降らし、龍虎が臥し、大江の流れは清く日の輝く中、黿鼉(ウミガメとワニ)の遊ぶさまが見える
眼前の枝は扶桑の西枝が断石に対しているように見え、水流の様子は弱水の東影が長流に隨うのを見るようだ、アカザの杖をついて世を嘆いているのはどんな人だろうか、泣血を空にほとばしらせながら白髪頭を回らしているではないか
白帝城はキ州城の東、クトウ峽入り口北岸の山上に立っている。古来多くの詩人に詠まれているが、杜甫も何度かこの山に登って詩を作っている。
アカザの杖をついてこの世の乱れを嘆き、血の涙をほとばしらせて白髪頭をめぐらせているのは、ほかならぬ杜甫自身の姿である。
関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説
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