初恋 First Love:イェイツの詩を読む

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ウィリアム・B・イェイツの詩集「塔」から「男の生涯Ⅰ・初恋」First Love(壺齋散人訳)

  残忍な月の女神のように
  冷酷に育てあげられはしたが
  頬を赤らめて歩く姿が
  健康な乙女のように見えたので
  わたしは彼女の体が
  血と肉で出来ていると思ったのだが

  彼女の体に手を伸ばすと
  そこには石の心臓があった
  もしかしたら勘違いではと
  わたしは何度も確かめたのだが
  その度に思い知るばかりだった
  月の表面をなぞっているだけだと

  彼女の笑いがわたしを変身させ
  わたしはただのうすのろになって
  あちこちをうろつきまわりながら
  天体の運行よりさらに
  拉致もない思いにふけるうち
  彼女の姿は消えてしまった


イェイツは詩集「塔」の中に、A Man Young and Old という小題を付した11篇の詩を置いた。モード・ゴンとの愛を振り返ったものだ。

一番目のこの詩は、モードの冷たい性格を描いている。イェイツは20年以上もの間、モードを思い続け、何度か求婚したのだが、モードはついに応えることがなかった。それは彼女の心が石でできていたからだと、イェイツは改めて自分に言い聞かせる。


First Love A Man Young and Old

  THOUGH nurtured like the sailing moon
  In beauty's murderous brood,
  She walked awhile and blushed awhile
  And on my pathway stood
  Until I thought her body bore
  A heart of flesh and blood.

  But since I laid a hand thereon
  And found a heart of stone
  I have attempted many things
  And not a thing is done,
  For every hand is lunatic
  That travels on the moon.

  She smiled and that transfigured me
  And left me but a lout,
  Maundering here, and maundering there,
  Emptier of thought
  Than the heavenly circuit of its stars
  When the moon sails out.


関連サイト: イェイツ:詩の翻訳と解説





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