杜甫の七言律詩「秋興其八」(壺齋散人注)
昆吾禦宿自逶迤 昆吾禦宿自づから逶迤たり
紫閣峰陰入渼陂 紫閣峰陰渼陂に入る
香稻啄餘鸚鵡粒 香稻啄み餘す鸚鵡の粒
碧梧棲老鳳凰枝 碧梧棲み老ゆ鳳凰の枝
佳人拾翠春相問 佳人の拾翠春相ひ問ふ
仙侶同舟晚更移 仙侶同舟晚に更に移る
彩筆昔曽干氣象 彩筆昔曽て氣象を干す
白頭吟望苦低垂 白頭吟望低垂に苦しむ
長安近郊の昆吾禦宿のあたりの道はうねうねと続き、紫閣峰を経て渼陂に通じていたものだ、途中には稲の実がなって鸚鵡がついばみ余すほどだったし、青桐の枝は鳳凰がとまるにも耐えたものだ
佳人と互いに訪問しあっては、船に乗って暮れ方まで遊んだものだ、その頃の自分は氣象を干すほどの文章を書いたものだが、いまは白髪となって頭を垂れるばかりなのが悲しい
かつて長安で遊びにくれた思い出を歌ったもの。そのころの自分は文章にも力がみなぎっていたものだが、それに対比していまの自分は、白髪頭をたれるばかり、そんな老衰の惨めさを歌う。
昆吾、禦宿はいづれも地名、紫閣峰は終南山の一支峰、渼陂はそのあたりを流れる川の堤と思われる、杜甫は山々を超え、山中のせせらぎを求めて歩き回ったのだろう。
関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説
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