ごびらっふの独白:草野心平の蛙の歌

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ごびらっふとはなにものか。一匹の蛙の名前だ。その蛙とはなにものだ。草野心平という名の変わった日本人の詩人のことだ。蛙としての草野心平という名の変わった日本人の詩人が蛙の言葉でしゃべる。それは日本語に翻訳可能な言葉なのだ。

ごびらっふの独白

  るてえる びる もれとりり がいく。
  ぐう であとびん むはありんく るてえる。
  けえる さみんだ げらげれんで。
  くろおむ てやあら ろん るるむ かみ う りりうむ。
  なみかんた りんり。
  なみかんたい りんり もろうふ ける げんけ しらすてえる。
  けるぱ うりりる うりりる びる るてえる。
  きり ろうふ ぷりりん びる けんせりあ。
  じゆろうで いろあ ぼらあむ でる あんぶりりよ。
  ぷう せりを てる。
  りりん てる。
  ぼろびいろ てる。
  ぐう しありる う ぐらびら とれも でる ぐりせりや ろとうる ける あり  たぶりあ。
  ぷう かんせりて る りりかんだ う きんきたんげ。
  ぐうら しありるだ けんた るてえる とれかんだ。
  いい げるせいた。
  でるけ ぷりむ かににん りんり。
  おりぢぐらん う ぐうて たんたけえる。
  びる さりを とうかんてりを。
  いい びりやん げるせえた。
  ばらあら ばらあ。


 日本語訳

  幸福といふものはたわいなくっていいものだ。
  おれはいま土のなかの靄のような幸福に包まれてゐる。
  地上の夏の大歓喜の。
  夜ひる眠らない馬力のはてに暗闇のなかの世界がくる。
  みんな孤独で。
  みんなの孤独が通じあふたしかな存在をほのぼの意識し。
  うつらうつらの日をすごすことは幸福である。
  この設計は神に通ずるわれわれの。
  侏羅紀の先祖がやってくれた。
  考へることをしないこと。
  素直なこと。
  夢をみること。
  地上の動物のなかで最も永い歴史をわれわれがもってゐるといふことは平凡ではあるが偉大である。
  とおれは思ふ。
  悲劇とか痛憤とかそんな道程のことではない。
  われわれはただたわいない幸福をこそうれしいとする。
  ああ虹が。
  おれの孤独に虹がみえる。
  おれの単簡な脳の組織は。
  言わば即ち天である。
  美しい虹だ。
  ばらあら ばらあ。

幸福とはなにか、この単純だが永遠の難題について、蛙が夢想する、それは蛙の脳の組織に反射した虹の美しさだと、蛙は思う


関連サイト: 草野心平:詩の鑑賞






≪ 誕生祭:草野心平の詩集「定本蛙」 | 日本文学覚書 | さやうなら一万年  草野心平 ≫

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