モスクワ市長ルシコフの解任

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18年間にわたってモスクワ市長を努めてきたユーリー・ルシコフЮрий Лужков(上の写真:AFP提供)が、メドヴェージェフの発した大統領令によって解任された。よきにつけ悪しきにつけ、ロシアの政治に強い影響力を及ぼしてきた政治家が、権力闘争に敗れて追放された形だ。

ロシアでも地方の首長は公選で選ばれた時期もあったが、プーチンの時代に、大統領によって任命できることとされ、その結果大都市のほとんどの首長が大統領に忠誠を使うようになった。そんななかでルシコフは、選挙で選ばれた首長として一人息を吐いてきただけに、今回の解任劇を、地方自治の死としてとらえるむきもある。

ルシコフが長い間失脚せずに、18年もモスクワ市長であり続けた背景には、彼の政治力があったといわれる。プーチンを強く支持し、統一ロシアの創設者の一人でもあったことから、プーチンの信任が厚かった。そこで多少あくどいことをやっても、失脚せずにすんだらしいのだ。

だがそれをいいことに、でたらめの限りを尽くした。たとえばモスクワの公共工事のほとんどを、妻エレーナ・バトゥーリナЕле́на Бату́рина の経営する建設会社に請け負わせ、その恩恵を被ったエレーナはロシアで一番金持ちの女性にのし上がった。

それでもルシコフが失脚しなかったのは、プーチンのバックアップはともかく、モスクワ市民に人気があったからだ。モスクワはルシコフのおかげで西洋的なモダンな都市に生まれ変わり、モスクワっ子たちの自尊心をくすぐったというのが、その理由らしい。

だが最近は、ルシコフの威勢にも翳りが出てきた。汚職三昧のやり方への批判が高まる一方、公共工事の利益のために、モスクワの伝統的な建築物を破壊するような蛮挙が、市民の怒りを買ったのだ。またこの夏は、スモッグ騒ぎでモスクワの市民が苦しんでいる最中、ルシコフは市長としての責務を放棄して外国で遊んでいたというので、一斉攻撃を浴びた。

攻撃を指示したのはメドヴェージェフ大統領だ。彼はクレムリンに、メディアを総動員してルシコフを攻撃するように命じたのである。

だがルシコフは当初、この攻撃をせせら笑っていた。プーチンの後ろ盾を期待したらしい。実際プーチンはこの攻撃について、メドヴェージェフから何らの説明もなかったといって、一時は怒りをあらわにして、ルシコフを擁護するかに見えた。

だがそのプーチンの目にも、ルシコフは救い難く映ったのだろう。結局ルシコフの追放に同意を与えたようなのだ。大物の追放劇だけに、一筋縄ではすまない要素を抱えていたといえる。


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