一時代の終わり The End of an Era

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前稿でアルゼンチン前大統領キルヒナーの突然の死について触れた。彼はもともと動脈硬化をわずらっていて、今年は二度も手術を受けていた。いつ死んでも不思議ではないともいわれていた。休養が必要なときにがむしゃらに働いたおかげで命を縮めたわけだ。

その彼ががむしゃらに働いた訳は、妻のフェルナンデス大統領を助けて、国のかじ取りをするためだったらしい。来年行われる大統領選には、彼自身出馬する意向も明らかにしていた。休んでる暇はなかったのだ。だがその結果命を縮めたのでは何にもならない。

キルヒナー氏は、アルゼンチンの政治史上記憶されるべき指導者だとの評価が高い。今世紀初頭に大混乱に陥った経済を立て直し、確固とした基盤を固めなおしたからだろう。

2003年、ペロニスト派におされる形で、サンタクルス州知事から大統領選に立候補して当選した。大統領になるや矢継ぎ早に改革を実行、大統領の権限を強化する中で、さまざまな課題を克服した。最大のものは、巨額の財政赤字を解決したことだ。

キルヒナー氏の政治姿勢は、内向きだといわれる。国際協調より国内事情を優先したことをさしている。キルヒナー氏はIMFがアルゼンチンを窮地に追いやったといって、常に国の自立を訴えていた。そのため、孤立主義的な方向に走ることもあった。

妻のフェルナンデス大統領は、上院議員としての経歴が長い、単なる操り人形ではないといえるが、政策の上では夫の圧倒的な援助を仰いできた。彼女の独自性が話題になるのは、食生活などのマイナーな分野だけだと、揶揄されることもある。

こんな次第で、アルゼンチンの政治は当分、かじ取りを失って混乱するかもしれない。だがその混乱を潜り抜けるところから、新しい政治が始まるかもしれない。そういう意味で、キルヒナー氏の死は、一時代の終わり The End of an Eraを意味しているといえそうだ。(上の写真はキルヒナー夫妻:EPA提供)


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このページは、が2010年11月 2日 20:06に書いたブログ記事です。

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