その瞬間、土俵を見ていた人たちは一様にびっくりした表情をした、無敵の横綱が土俵を割って、そのまま土俵下に転がり込んでいったからだ、ややして身を起こした横綱は、一瞬照れ笑いを見せたが、その後呆然とした表情に変った。(上の写真は毎日新聞提供)
負けたことがこんなに大きな話題になるとは、何とも皮肉なことだ。裏を返せば、誰もが負けることを想像できないくらい、白鵬は強い横綱だったということだ。初場所から連勝記録が始まって、四場所連続負け知らず、今場所は不滅といわれた双葉山の連勝記録に挑んでいた。
とにかく白鵬には勢いがあった。彼には負けることが似合わないくらい、勝つのが当たり前と、皆に思われていた。こんなすさまじいオーラを持った横綱は、たしかに双葉山以来といえるかもしれない。
白鵬の強さのおかげで、一連の不祥事続きでかげりがあった相撲人気が、盛り上がりを見せていた。強さというのは、しかも歴史的な強さというのは、人々を魅了してやまないのだ。
白鵬の連勝記録を63でストップさせたのは稀勢の里、外国人が主流の今の各界にあって、日本人力士のホープともいえる男だ。今場所もし白鵬の記録に待ったをかける力士が現れるとすれば、それは稀勢の里だろうともいわれていた。彼には、横綱になる器が備わっている。
かつて双葉山の連勝を69でストップさせた安芸の海は、その後横綱に上り詰めた。偉大な記録はやはり非凡な人によって破られるのだ。稀勢の里にも是非、横綱になってもらいたい。
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