冗談も時と場合による:柳田法相の辞任

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支持者を前にした講演の中で、国会軽視の発言を行ったとして野党各党から厳しい追及を受けていた柳田法務大臣(上の写真:ロイター提供)が、ついに辞任した。本人は一貫してやめる気はないといっていたのだったが、政局の混乱を懸念した菅総理が引導を渡したようだ。

今回の騒ぎの発端となった講演と問題となった発言を改めて振り返ると、たしかに柳田氏は軽率だったという印象を与える。

彼が件の発言をしたのは、国会をバカにする意図からというより、自分の無能ぶりを反省する気持ちから出たものと受け取られる。事実彼は、問題の発言をしながら、始終照れ笑いをしていた。こうした隙のようなものが、政敵に付け入る余地を与えたともいえる。

支持者を前にした内輪の会合での発言、しかもほんの冗談をいったつもりなのに、それがこんな騒ぎに発展するとは、本人にとっては意外な展開だったろう。マスコミに囲まれて、なぜ自分からやめないのだと詰め寄られ、国会のことは国会におまかせし、自分のことは自分で決めると、わけのわからないことを繰り返していたのも、罪の意識が薄かった証拠だ。

それはさておき、今回の騒ぎは、日本の政治状況の漫画チックな側面を、改めて世界中にアピールしたようだ。日本の政治家は、物事の本質については鈍感だが、くだらぬ党派争いには情熱をかけるというわけだ。エコノミストの記事などは、こうした状況をさして、日本政治の風土病だといっている。

それにしても、日本の政治のお粗末な状況は、自民党から民主党へと政権政党が変わっても、なかなか変化の兆しがないようだ。そのお粗末ぶりを一言で言い表せば、政治家のリーダーシップの不在ということだろう。

菅内閣の支持率は、いまや30パーセントを割り込む深刻さだが、その理由は基本的には菅総理自身のリーダーシップの不足にある。

まづ先の参議院選挙に際しては、党内のコンセンサスがないままに消費税の増税に言及し、選挙での手痛い敗北をもたらした、尖閣諸島をめぐる中国への対応では、あたふたぶりが目立って周囲からバカにされ、あまつさえそこのところをロシアに付け込まれて、北方領土はロシアのものだとメドヴェージェフに言わせる始末、TPPを通じての自由貿易の拡大を巡っては、農家からの猛烈な反発を食らって、いったん打ち上げたアドバルーンを引っ込める、こういった一連の迷走ぶりが国民の不安や反感を高めているというわけだ。

柳田法相のミステイクは、このような微妙な時期に起きた。同じ冗談でも、政局が安定していれば笑ってすまされただろう。冗談を言うには時と場合を選ばねばならぬということだ。


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