緊迫する朝鮮半島:北朝鮮反撃を自制?

| コメント(0) | トラックバック(0)

12月20日に行われた韓国のヨンビョン島での砲撃訓練は、世界中の人びとが固唾を呑んで注視したに違いない。

この訓練に対して北朝鮮が反発し、韓国側が強行すれば先月23日以上の規模で反撃するとともに、場合によっては核兵器の使用も辞さないと脅迫していたからだ。それに対して韓国側も、北朝鮮のいかなる挑発行為に対しても、断固として反撃すると応じていた。まかり間違えば、大規模な軍事衝突が起こる可能性もあった。

だが幸いなことに、予定通り実施された韓国側の砲撃訓練に対して、北朝鮮は戦闘準備に入るジェスチャーは示したものの、軍事的な反発をすることはなかった。とりあえずは、南北が直接軍事衝突するという最悪の事態は避けられたわけだ。

北朝鮮が、どういうわけで反撃を思いとどまったのか、いまのところはわからない。自分の側の状況判断と衝突がもたらす結果に対する予測を踏まえた自主的な判断なのか、中国など外部からの働きかけがあったのか、内実は闇に包まれたままだ。

中国は、あたかも自分のはたらきかけの結果、北朝鮮が自制したような言い方をしている。ところがその中国は、国連安保理での協議では、一貫して北朝鮮を擁護し、あたかも先日のヨンビョン島事件など存在しなかったような言い方をしている。

ロシアはロシアで、南北双方に自制を求めているが、これは北の挑発を不問にしている点で、中国の態度と五十歩百歩だ。ロシアはまた、黄海上での米韓合同の訓練を未来に渉って自制するように求めているが、これは自国の安全保障を考えた上での言動だ。他人のいざこざを利用して、自分の利益を図ろうとする、火事場泥棒のようなやり方といえよう。

ともあれ、衝突が回避されたことは、結果的にはよいことだった。だがそれで、危機的状況がなくなったわけではない。いつまた対立が表面化しないとも限らない。

それにしても、今回の事態で冷や汗をかいたのは筆者だけではあるまい。もしかしたら北朝鮮が韓国に原爆を落としていたかもしれないのだ。そのとばっちりで日本にも火の粉が降ってこないとも限らなかったのだ。

この危機の中で、避難行動を取った人も多かったことだろう。訓練は20日の正午前後に始まると当初伝えられたので、筆者などはその時間、地下鉄駅の構内にもぐりこんで、不測の事態に備えたものだ。

日本の政治家たちも、隣国で起きつつあることが、わが国の安全に重大な危機を及ぼす可能性については、十分に認識していたと理解したい。

ところが菅総理大臣がこの時間帯にしていたことといえば、同じ民主党の議員である小沢一郎氏と、会談していたことだった。会談といっても、小沢氏に政治家としての責任を取れとか、俺の言うことをきけとかといった発言を繰り返すばかりで、いたって次元の低い話だ。国民の多くはこれを、民主党内の権力闘争と見ている。

国家の大事というときに、権力闘争に現を抜かしている場合ではないだろう、誰もがそう感じたに違いない。


関連記事:
妄動する北朝鮮:ヨンビョン島への砲撃
アジアの軍拡競争
菅さん、もっと毅然とせにゃいかん





≪ プーチンが答えなかった質問:恒例の国民対話 | 世界情勢を読む | 恥を知らない中国人たち ≫

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://blog.hix05.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/2766

コメントする



アーカイブ

Powered by Movable Type 4.24-ja

本日
昨日

この記事について

このページは、が2010年12月21日 18:56に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「Facebook:世界の人々のつながりをマッピング」です。

次のブログ記事は「ホワイトライオンの双子」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。