ロシアのサッカー・ファンは、時に暴力的なフーリガンに変身することで有名だ。普通は贔屓のチームをめぐってフーリガン同士が騒ぎを引き起こしているが、ナショナルチームのことになると、ゆがんだ愛国心が爆発する。
2002年のワールドカップの際、ロシアチームが日本に負けたのを憤ったフーリガンたちが、モスクワ中を暴れ周り、日本から来たミュージシャンを襲撃したことなどは、いい例だ。
このたびはフーリガン同士の対立から、大規模な民族対立が起こりかねない事態が起こった。モスクワチームのファンがカフカースチームのファンといさかいになり、ロシア人青年イェーゴリ・スヴィリドフが死んだことがきっかけだった。
警察はカフカース人数人を逮捕したが、すぐに釈放した。これにモスクワの青年たちが怒りを爆発させたわけだ。犯人がすぐに釈放されたのは、賄賂の効力だと思い込んだ青年たちが、一万人規模のデモ隊に膨れ上がり、カフカース人を見つけ次第攻撃するとともに、警察にも敵対行動をとった。
暴動はなかなかやむ様子がないばかりか、ますます膨れ上がるかに見えた。放置しておけば、深刻な民族対立に発展しかねない。これには、さすがのプーチンも驚いて、自ら沈静化に乗り出したほどだ。
チェチェン問題でさんざん手を焼いてきたプーチンにとって、民族対立の泥沼が再びロシアを飲み込むことに、強い脅威を感じたはずだ。
上の写真(ロイター提供)は、スヴィリドフの死に抗議して集まったモスクワのサッカー・ファンたち。彼らの挨拶はナチス式だ。
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