アリゾナ銃乱射事件の政治的背景

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アリゾナ州トゥーソンで起きた銃乱射事件は、アメリカ社会に大きな衝撃を与えた。犯人のジャレード・ロフナー Jared Loughner に麻薬歴があり、また精神的に病んでいたことを取り上げて、衝撃的だがあくまで偶発的な出来事だったととらえる見方がある一方、現在のアメリカ社会が陥っている閉塞状況から、起こるべくして起きた事件だととらえる見方が競い合っているようだ。

リベラルを自任するポール・クルーグマンはその際たるもので、今日の閉塞状況をもたらした主な責任は、共和党の保守主義者たちだと攻撃している。

クルーグマンの基本的なスタンスは、民主党が政権をとるごとにアメリカの右翼が活発化し、テロ事件が頻発してきたというものだ。クリントンが政権をとった1992年以降にも右翼が活発化し、それがオクラホマの連邦ビル爆破事件につながった。そして今回はオバマを標的に活発化したティー・パーティ運動の憎しみの中から、政治的なテロリズムが頭をもたげ、それが今回の事件につながったという理解だ。

クルーグマンのいうように、ティー・パーティ運動の興奮のさなか、民衆のなかの右翼的、暴力的な要素が、煽り立てられてきたことは否めないようだ。マス・メディアまでが有権者を相手に、暴力的な表現で、そうした要素を煽り立てた。

だからクルーグマンにとっては、今回の事件は、リベラル勢力への憎悪に駆られた、右翼の攻撃だということになる。実際、ロフナーは日頃から、民主党議員ギフォーズへの敵意をあらわにしていたらしいし、偶発的な事件として片付けられないものがある。

クルーグマンに限らず、今回の事件に政治的背景を読み取るものは多い。彼らの多くは、マッケイン、ペイリン陣営が、ティー・パーティ運動の中で繰り広げた度を越した保守主義が、差別主義や暴力肯定をそそのかし続けてきたと考えている。

こうした指摘に対して、ペイリンなどは強く反発している。彼女はフェースブック上で、今回の事件の犠牲者たちに、早々に哀悼の意を表したが、事件そのものは異常な人物による異常な犯罪だと考えているようだ。

一方、オバマ大統領は、国民に対してSoul Searching を呼びかけている。Soul Searching とは、ありていに言えば、もっと頭を冷やそうという意味だろう。そのとおりに、アメリカ国民が頭を冷やすようになるなら、今回の事件はターニング・ポイントとなるだろう。そうならなければ、憎悪のスパイラルが始まる発端となりかねない。(写真はロフナー容疑者:AFP提供)


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