日本版「エコノミスト」がアメリカのデフレを特集している。リーマンショック後のアメリカの経済停滞は、2009年には底打ちしたといわれていたが、その後なかなか上向く兆しがないばかりか、最近は二番底の可能性さえささやかれている、その背景にはかつて日本が陥った(いまでも脱却できないでいる)デフレと同じ要因が働いているのではないか、そういう議論が展開されている。
FRBのバーナンキ議長がQE2を決断したのは、日本型デフレを警戒してのことだったが、いまのところ十分な政策効果を挙げるには至っていない。ゼロ金利で大量にばら撒かれる金が実需喚起に結びつかず、銀行に滞留したり、政府証券の購入に向けられている。あるいは、中国など資金需要が旺盛で、ハイリターンが見込める新興国への投資に向けられている。こうした状況では、アメリカ経済の堅実な回復は望みがたい、というわけである。
日本の場合に、1990年代以降のデフレの引き金となったのが、住宅バブルの崩壊だったように、アメリカの場合にも、サブプライムローン問題に象徴されるような住宅バブルの崩壊がデフレ圧力を強めたとされる。
アメリカ経済にとって、住宅市場は大きな割合を占めている。住宅が売れるということは、耐久消費財も売れることを意味し、それが活発な設備投資を促す。また住宅の資産価値の値上がり期待が、消費者の消費マインドを活発化させる。アメリカ人の多くは、稼いだ金を貯金せず、すべて消費に回すことに加え、ローンも活発に活用する、それは経済の右肩上がりを前提にしたインフレ・マインドに支えられているわけだ。
だが今日のアメリカ経済は、インフレ・マインドの入り込む隙間がないほど、冷え込んでいる。そのうえ、企業も家計もバランス・シートを改善させることが先決で、消費にまわる余裕が少なくなっている。アメリカ経済は、消費に依存する割合が強いから、消費の冷え込みはGDPの引き下げに作用する。
雇用の状態がなかなか改善されず、いまだに10パーセント近い失業率だが、これも国民の購買力の低下につながることで、デフレ圧力を強めている。
こんなわけで、アメリカは日本と同じようなメカニズムを通して、デフレ・スパイラルに陥るのではないか、こんな危機感が広がっているというのだ。
ひとつだけ気になったのは、こうした議論を展開するエコノミストたちが、中国を始めとする新興国のファクターを余り考慮に入れてないことだ。為替レートなどの要因をひとまずワキへ置いても、安い中国製品の流入が、アメリカの雇用や物価に与える影響は並大抵のものではないはずだ。
グローバライゼーションは、先進国にとっては、デフレ圧力として働くと考えたほうがよい。
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