昨日(1月24日)モスクワのドモジェドヴォ Домодедого 国際空港で自爆テロがあり、当日夜の当局の発表によれば、少なくとも35人が死亡、168人が負傷した。(上の写真:AP提供)
事故の直後、メドヴェージェフはテレビで演説して、これがテロであると断定し、プーチンもまたテレビに出演して、あらゆる努力をして犠牲者を救出するように訴えた。
今のところ犯行声明は出ていないようだが、北カフカースのイスラム勢力によるとの見方が専らだ。昨年の暮、ロシアの民族主義者が北カフカースの若者たちと大規模な衝突を起こし、民族対立が先鋭化する様相を見せていただけに、今回の自爆テロはその延長線上でのことだとする見方が有力だ。
事情通は今回のテロをチェチェン武装派のリーダー、ドク・ウマロフДоку Умаров の仕業だろうと見ている。彼は昨年の3月に、モスクワの地下鉄で女性二人による自爆テロを仕掛け40人の死者を出させた。また2009年12月の列車爆破テロも彼らのグループの仕業だと見られている。
それにしても、短期間でこんなにも多くのテロが発生する都市は、中東などの紛争地帯を除けば、モスクワ以外にない。ロシアは先進国の間では、もっともテロに弱い都市になっている。
これまでなら、テロが起きるたびにプーチンのグリップがきつくなり、それに比例してテロが困難になるとともに、プーチンの権力基盤が強化されてきた。しかしそのプーチンによるテロ封じ込めも万能ではない。
今回のテロは、乗降客でごった返すオープンスペースで起きた。テロリストは大勢の客にまぎれてアライヴァル・ホールにたどりつき、そこで身にまとっていた爆弾を爆発させた。その時はちょうどヨーロッパからの国際便が到着した直後で、現場には大勢のヨーロッパ人もいた。犠牲者の中には、それらの人たちが多く含まれていると見られる。
メドヴェージェフは、このテロにもっとも衝撃を受けた一人だ。彼は脆弱なロシア経済を強化するために積極的な外資導入を狙ってきたし、また遠からぬ先にはソチの冬季オリンピックも控えている。そういう大事な時期に、これほど容易に自爆テロが起こり、西欧のビジネスマンまで巻き込まれるようでは、世界の信用はがた落ちだ。
北カフカースの分離主義者たちが狙っているのはまさにそこのところだろう。彼らとロシア政府との間には越えがたい憎しみの壁がある。この壁がある限り、双方が話し合いを経て和解することは難しい。
ロシアのテロ対策に究極の妙案はないかもしれぬが、それに近いものがあるとすれば、ロシアによる少数民族への統治のスタイルを変えることだ。いいかえれば力による支配から、法と道理に基づいた統治へと転換することだ。
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