葛根廟事件:ソ連による日本人の大虐殺

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日本の北方領土をめぐるロシアの姿勢がいよいよ頑なになってきた。どうやら永久占領を視野に入れているようだ。最近は、中国や韓国の企業を巻き込んで、開発を進めようとする姿勢まで示している。

ロシアは北方領土をソ連体制から引き継いだもので、ソ連はそれらを第二次世界大戦の戦利品として手に入れたものだと主張している。つまり北方諸島はスターリンからもらった遺産だといっているわけだ。

ソ連による北方諸島の占領が不法なものであることは国際法上明らかなことだ。ソ連は第二次世界大戦終了間際、北方諸島の占領以外にも、日本人に対して犯罪的な行為を重ねている。もっとも大規模なものは60万人に上る日本兵を捕虜にして強制労働させたことだが、野蛮かつ残虐という点で、葛根廟事件を忘れてはならない。

大戦末期満蒙各地に取り残された日本人は自主的な避難を目指して懸命な努力をしていた。そのなかで内蒙古興安省地区の住民約1400名は、40キロ離れた葛根廟駅から白阿線に乗り南へ向かうという計画をたて、興安省参事官浅野良三に指揮せられながら徒歩行進をした。一行が葛根廟丘陵にさしかかった8月14日午前11時過、丘陵の上からソ連兵が現れ、白旗を振った浅野を機銃射撃で殺した後、行進していた人々に戦車で襲い掛かった。

1400人の日本人は大部分が女性や子供であったが、ソ連兵はそれを知りながら彼らに襲い掛かり、戦車で轢き殺したり、銃剣で突き殺したり、2時間ほどの短い間に無抵抗の日本人1000名余りを殺し尽くした。これが葛根廟事件といわれる陰惨な事件の概要だ。

この事件については、日本国民の中でも余り知られていないのではないか。大櫛戊辰など一握りの人たちが、生き残った人から聞いたことを細々と伝えているのみだ。政府による調査が行われた形跡もない。

この事件は身の毛のよだつような残虐行為だったわけだが、ソ連は日本人のみならず、ドイツ人やポーランド人等々に対しても、違法で残酷な虐殺行為を重ねている。それらは戦争捕虜であったり、非戦闘員を対象に行われたものだが、ソ連はハーグ条約に加入していないことを理由に、虐殺はソ連側が受けた苦痛への正当な仕返しだったと公然と反論したこともある。

こうしたソ連の戦争犯罪に対して、ポーランド政府は、カティンの森虐殺事件の真相を粘り強く追究し、ついに昨年プーチンとロシア議会に謝罪させた。もっともその直後、ポーランド大統領カチンスキーの一行が、ロシア領内で謎の死を遂げるという不可解な事件が起こってはいるが。

カティンの森の虐殺では、ポーランド側の戦争捕虜約一万人がソ連によって虐殺された。これに対して葛根廟事件で殺された日本人はほとんどが女性や子供だ。ソ連兵は生き残った女性たちにも繰り返し襲い掛かり、強姦をしたり、身ぐるみはぐなどの蛮行を重ねた。

ソ連が過去に犯したこのような犯罪行為に対して、日本政府はなぜか、今まで問題にしたことがない。北方領土の不法占拠をロシアが合理化しようとしている今こそ、ソ連・ロシアによる日本人への野蛮で残虐な不法行為について、日本政府はきちんとした真相追及の努力をすべきではないか。


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