アメリカの反イスラム感情が、大変な高まりを見せている。9.11をきっかけに、アメリカ人の反イスラム感情は、テロリズムとの関連において問題となり、しばしば極端な不寛容に発展することがあったが、最近は不寛容を越えて、露骨な攻撃にまで発展しそうな勢いなのだ。
その反イスラム感情の波に乗って、それを煽り立てるのが流行っている。その最先端にいるのがブリジット・ガブリエル(Brigitte Gabriel)だ。彼女は著作の中で反イスラム感情をむき出しにし、ティーパーティの政治集会や宗教的な集まりの席で、人々の情動に訴えるやり方で、イスラムとの対決を絶叫している。
たとえばこんな調子だ。
"America has been infiltrated on all levels by radicals who wish to harm America," she said. "They have infiltrated us at the C.I.A., at the F.B.I., at the Pentagon, at the State Department. They are being radicalized in radical mosques in our cities and communities within the United States."
彼女が主に呼びかけているのは、保守的な白人層で、共和党の支持者が多いとされる。そんな人々でも、彼女の言葉によって、改めてイスラムへの憎しみを掻き立てられるのだという。
とにかくその言葉は過激そのものだ。
"The cancer is called Islamofacism. This ideology is coming out of one source: The Koran."
こうした言葉を連発することで、彼女は聴衆の中に潜んでいる憎しみの炎に油を注ぎ、イスラム教徒に対する暴力的な攻撃を正当化させようとする。ある意味でヒトラーのやり方に似た、心理的なプロパガンダだ。
彼女は1964年にレバノンに生まれ、1980年代にアメリカに帰化した。キリスト教徒だった彼女の家族は、70年代のレバノン内戦の際にイスラム教徒によって迫害され、イスラエルへの亡命を余儀なくされた。このときの体験が、イスラムへの憎しみを育み、今日の強烈な反イスラム主義へと発展したのだという。
このように彼女の反イスラム主義は根が深いわけだが、それが最近のアメリカ社会における反イスラム感情の高まりと結びついて、爆発したということだろう。
ヨーロッパの極右運動は最近、反イスラムと結びつく傾向が強いといわれるが、アメリカの極右運動はそれ以上にイスラム排斥に走りやすい。彼女が声を上げる以前から存在していたそうした極右運動が、彼女の声を利用して、反イスラムの大合唱をアメリカに響き渡らせようとする、そんな思惑が強く働いているのを感じる。(写真はNYTから)
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