福島の原発事故は、原子力発電の安全性への疑問を、改めて世界中に突きつけた。ドイツのメルケル首相はいち早く、自ら決定していた国内原発施設の稼動延長措置を停止することを決めた。
メルケル首相は「日本で起こった出来事は、これまで絶対ないと考えられてきたリスクが絶対ないとは言えないという事実を教えてくれている。たんにこれまで通り、このまま進めることはできない」と延べ、原子力発電そのものの是非を再検討することも示唆している。少なくとも、1970年代に建設された発電所は、そのまま閉鎖される可能性が高い。
一方、オバマ大統領が地球温暖化対策の切り札のひとつとして推進を決めていたアメリカの原発政策も、大きな見直しを迫られる可能性が高い。
ニューヨーク・タイムズなどは、万全と思われていた日本の原発事故対策でさえ盲点を付かれた形で大惨事につながったことを指摘し、アメリカも原子力発電をとりあえず停止し、ゼロから徹底した見直しをすべきだと訴えている。これは、アメリカ人の大方の意見を反映したものだと受け取れる。
フランスほか西欧諸国でも、原発政策の見直しは避けられない勢いだ。
これから本格的な原発建設時代を迎える中国にとっても、福島の事態は深刻に受け止められている。もっとも中国では、にわかに原発をストップしようという動きは、まだ起きていないようだ。
こうした騒ぎの張本人たる日本においては、今は目前の危機を乗り切るのに精一杯で、今後の原子力発電政策について考えるゆとりはない状態だ。しかし、いずれ抜本的な見直しを迫られることは避けられまい。(写真は原発の廃止を求めるドイツの人々のデモ:EPA提供)
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