東電福島原発事故は、対応が後手後手にまわって、事態を深刻にさせていることから、これは政府・東電による人災だという非難が巻き起っている。
そう非難する人が、非難理由に挙げているのは、事故発生後、事態を収拾するチャンスが、少なくとも二度あったはずなのに、政府と東電がそれを無視したとする事実、そしてその背景には原発の機能を何とかして残したいとする、東電の強欲な体質があったとする見方だ。
最初のチャンスはアメリカからの援助申し入れがあったときに訪れた。事故発生の直後、アメリカ政府は、この事故の本質が冷却機能の麻痺であることを根拠に、原子炉の強制冷却についての協力を申し入れてきたが、日本政府はこれを断った。理由は、アメリカ政府案が原子炉の廃炉を前提にしたものであり、東電としては受け入れがたかったからだといわれる。
二度目のチャンスは、十一日夕、菅総理が国民へのメッセージを発するに際して、政府と東電とが協議した際にあった。このとき政府側は事態を重く見て、海水使用を含めた強制冷却と半径10キロメートル以内の住民の避難を提案したが、東電側は根拠のない楽観論を展開して、海水の使用を拒絶した。これも原子炉が使い物にならなくなるという理由からだ。
結局菅総理は、東電の楽観論に乗せられた形で、事態は深刻に受け止めるものではないといいつつ、念のためにといって半径3キロ以内の住民に非難を指示した。最もクリティカルで、決定的な瞬間に、日本の政治の最高指導者が、明確な根拠もないままに、結果的には誤った決定を下したわけだ。
これらの情報は、新聞のスクープ記事から得たものであり、枝野官房長官などは、その一部を強く否定してはいる。だがそれにもかかわらず、さもありそうに受け取れるところが、今の日本の政治の病理を反映しているようで、筆者などは一人の日本人として、やるせない気持ちになるのだ。
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