放射能汚染はどこまで広がるか:福島原発事故

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国の原子力安全委員会が「緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI)システム」の試算結果を公表した。それによれば、半径30キロ圏及びそれを越えた40キロ圏地帯の一部まで、まだら状に汚染が広がっている実態が明らかになった。

この地域の住民は、放射性ヨウ素を100ミリシーベルト以上被爆している可能性もあるという。

それでも原子力安全委員長は、「非常に厳しい条件を想定した。ただちに対策をとる必要はない」との見解を示した。これについては、朝日新聞の社説が、「こうした予測で厳しめの仮定をするのは当然のことだ。そのうえで被曝量を見積もったら、それが指針にある目安を超えた。それなのに「ただちに対策をとる必要はない」と言われたら、なんのための試算か目安かと戸惑う。」強く批判しているが、国民のほとんども同じ気持ちだろう。

政府や東電と同様に、原子力の脅威から国民を守るための第三者機関であるはずの原子力委員会まで、こういうわけのわからぬ行為に明け暮れているのは、心外なことだ。

朝日新聞はまた、事故発生直後の12日午前6時から24日午前0時までの放射性ヨウ素の放出量を単純計算すると、3万~11万テラベクレル(テラは1兆倍)になると想定している。これは国際評価尺度にいう「レベル6」(数千~数万テラベクレル)に相当し、レベル5だったスリーマイル島をしのぐものだ。

放射性セシウムについては、原発から北東に40キロ離れた飯館村で、土壌1キログラムあたり16万3千ベクレルを記録した。これは1平方メートルあたりに換算して326万ベクレルになるという。チェルノーブィリ事故で住民の強制移住の目安となったのが1平方メートルあたり55万ベクレルだから、その6倍の値だ。

セシウムの半減期は30年と、ヨウ素に比べれば桁違いに長い。土壌の入れ替えも考えなければならないのではないか、朝日新聞はこう結論付けていた。

東電も政府も、これまで国民に向かって、放射能の影響は限定的なものだから、気にする必要はないといい続けてきたが、現実にはそれに反するような事態が次々と起きている。

福島県の生乳や北関東産のほうれん草から基準を超える放射能が検出された。東京を始め首都圏の水道水は、乳児にとって危険になったと各自治体から知らされた。災害の拡大を防ぐために放水作業などを行っていた多数の人々が、許容限度ぎりぎりに被爆した。復旧作業に従事中の作業員が被爆して放射線熱傷をこうむった。

こうした事実が明らかにされるたびに、国民は政府に対する信頼を失っていくばかりだ。

政府は正確な情報を迅速に伝えて、必要で適切な対応を国民が取れるように、全力を挙げなければならない。そうした努力を回避して、住民に自主避難(自分の判断で避難すること)を勧めるようでは、責任逃れといわれてもしょうがない。


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このページは、が2011年3月25日 20:28に書いたブログ記事です。

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