中部電力が浜岡原発3号機再稼働を表明:投資家への責務?

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中部電力の水野社長は、点検中の浜岡原発第三号機を今年の7月にも再稼働させたいと、記者会見の場で正式に表明した。「株主、投資家に業績予想という物差しを示す責務がある」からだそうだ。「安全性については十分確認している。さらに安全性を確かめるために緊急の津波対策も実施する」と付け加えた。

この説明を聞いて、ほとんどの日本人は啞然としたことだろう。なにしろ福島第一原発の事故はいまだ収束の見込みもたっておらず、その原因追及や今後の事故防止の在り方について、十分な議論も進んでいない。そんな中で、安全性には自信があるから、俺たちのいうことを信用して、原発の再開を認めろといっているわけだ。

ことは一私企業のいっていることであり、私企業は私企業としての都合があるだろうから、そのいうことにあまり目くじらを立てる必要もない、という見方もあるかもしれぬ。だがいくら私企業だからといって、余りにも無神経すぎるのではないか。

原発は私企業が私の都合で勝手に行ってよい事業ではない。なぜなら、チェルノーブィリや福島第一が示したように、原発が引き起こす事故は膨大な社会的・国家的損失をもたらすからだ。だからこそどの国でも原発の推進には、国の安全政策が深くかかわっている。今回の福島原発がきっかけで、ドイツやイタリアでは、原発施設の無期限稼働停止が国によって決められたほどだ。

中部電力の今回の行動を巡って、国の官庁の間では、受け取り方に温度差があるようだ。資源エネルギー庁は原発推進の立場をとっている手前、中部電力の考えには理解を示している。原子力安全・保安院はいまのところ、明確な考えを示せないでいる。経済産業省の一組織としての立場が、そんなあいまいな態度をとらせている原因だ。

地元の静岡県や御前崎市は、中部電力の方針が実行されることは「現状ではありえない」としている。「市民に安全だと説明できないかぎり」再開を容認することはできないという立場だ。

中部電力の立場は、電力会社としての彼らの本音を表したものに過ぎず、それがすぐに実行されるわけではないのが、日本の原子力行政のあり方だ。浜岡原発が再稼働できるようになるまでには、越えなければならないハードルがいくつもある。そのことは当の中部電力もわかっているはずだ。

わかっていながら社長自らこんなことを云いだし、進んで世間から冷たい目で見られる。どうも訳がわからぬ連中の、訳がわからぬ話だ。こんな訳のわからぬ輩のために命が危険にさらされるのはまっぴらだ、誰もがそう思うはずだ。


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このページは、が2011年4月29日 19:25に書いたブログ記事です。

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