政府閉鎖(Government Shutdown)の危機を回避:アメリカのチキンレース

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2011会計年度の歳出削減を巡って民主、共和両党の間でチキンレースが繰り広げられ、このままでは15年ぶりの政府閉鎖(Government Shutdown)かと懸念されたが、オバマ大統領と共和党のベイナー下院議長との間で妥協が成立し、政府閉鎖はぎりぎりで回避されることとなった。

もし政府閉鎖が実施された場合には、国民生活の基本にかかわる重大施策を除いて、多くの事業が凍結されたはずだ。連邦政府職員の三分の一に当たる80万人がレイオフされ、多くの窓口が閉鎖され、国立博物館、国立公園などが閉鎖されるはずだった。その結果、好調とは言えない経済の状況が一層悪化することが懸念された。

妥協の中身は、2011会計年度後半の半年間で785億ドルを削減するというもの。背景には国の財政負担を軽減すべきだと主張する共和党右派の草の根運動「ティーパーティ(Tea Party)」の強い意向があるとされる。

なお、政府閉鎖とは、Antideficiency Act(Title 31 of the United States Code § 1341 合衆国法典31編1341条 不足金請求禁止条項)が定めている制度で、政府は予算不足のさいは、緊急のものを除き業務を停止しなければならないというものである。

過去に起こった政府閉鎖のもっとも大規模なものは、1995-1996にかけて発生したもので、下院議長ニュート・ギングリッチ率いる共和党と、民主党クリントン政権との予算をめぐる党派対立の高まり(均衡財政や福祉削減など)と国債上限引き上げ問題が容易に解決せず、時間切れとなって政府閉鎖に突入した。

日本では、アメリカと同じような制度はない。ただ政府の施策は、法律と予算が一体となって初めて実現されるので、与党に妥協をせまる野党側は、予算の成立を阻むことで政策の実施を阻止したり、あるいは予算が通っても、それを実施するための法律を阻止したりという方法で、事実上、政策の実施をサボタージュしようとする。

どちらにしても、政党間のパワーバランスが崩れ、安定した政権基盤が揺らいでいる状況で生じるものだ。そんなところから、政府閉鎖になだれ込むような与野党の争いを、揶揄する気持ちを込めて、チキンレースといっている。


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このページは、が2011年4月10日 21:04に書いたブログ記事です。

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