4月7日、韓国のソウル首都圏では雨が降ったそうだ。それにともなって首都圏の京畿道教育庁は、幼稚園・小学校130校の校長に対して臨時休校を勧告したという。福島原発の事故現場から放出されている放射性物質が雨となって児童たちの頭上に降り注ぐのではないか、そんな心配から出た、やむにやまれぬ措置ということらしい。
いっぽう首都そのものであるソウル市の教育委員会は、日本から飛散するとされる放射性物質は、ごく微量で、人の健康には全く影響することがないという理由で、休校などは必要ないとしている。
こうした対応の差がどうして生まれるのか。メディアから取材を受けた京畿道教育庁は、今回の措置は科学的な根拠とは別の次元で、親の心配をなだめるために決定されたものだと強調している。
これに対してソウル市教育委員会は、根拠のない理由で子供から教育の機会を奪うのは感心しないといっているが、親の中にはその言い分を激しく非難する者もある。子供のことを考えたら、どんなに用心しても、しすぎることはないという理屈だ。いかにも、子供を宝物のように大事にする韓国文化ならではの発想といえよう。
韓国の有力新聞中央日報の社説は、こうした動きを紹介しながら、一方では京畿道教育庁の措置を、親の期待に応えた適切なものだと評価しながら、ソウル市教育委員会の姿勢も、科学的根拠に基づく極めて妥当なものだと力説している。
韓国政府は、福島原発の事故処理には非常に大きな関心を示し続けているが、それはこうした国民の動向に配慮したものなのだろう。
今般は日本側が放射能汚染水を海に放出したことを、韓国政府は、中国政府やロシア政府とともに強く非難したが、それも韓国民の深刻な不安を背景にしたものだと思えば、理解できる行動といえる。(写真は放射能を表すハザードシンボルをあしらった傘:AFP)
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