昨日(4月12日)、日本政府が福島原発事故のレベルを7に引き上げたことに伴い、菅総理大臣の記者会見が行われたが、そのことに関して、ニューヨーク・タイムズが批判的な論評を載せている。Japanese Officials on Defensive as Nuclear Alert Level Rises
菅総理大臣は記者たちから、情報開示の遅れを指摘されるとともに。政府が意図的に情報操作をしているのではないかと問われたときに、情報開示が遅れたことはあったかもしれないが、意図的に操作していることはないと強く否定した。ところが、現場レベルでの会見では、こうした発言に疑義を抱かせるような光景が見られたというのだ。
原子力安全・保安院の西山審議官は、これまでに放出された放射能の量は約37万テラベクレルで、これはチェルノブイリの10分の1だと説明した上で、もうこれ以上の放射能漏れはないと断言した。
これに対して、同じ時間帯に東電が設定した記者会見では、東電の幹部が、放射能漏れは今後もありうるし、また総量がチェルノブイリを上回る可能性もあると発言して、記者たちをびっくりさせた。
また、政府から独立した形の原子力委員会は、放射能漏れの総量を63万ベクレルだと発表した。
三者それぞれに違うことをいっているわけだ。これではデータの正確性や、予測の蓋然性について、信用が得られないのは当然のことだろう。
この先は筆者の感想だが、このようなデータを並べられたら、国民は最もシビアな内容を最も強く信じるに違いない。西山審議官は東電の見解を強く批判し、いったいどういう立場で発言しているのか、真意がわからないといったそうだが、いっていることの意味がわからないのは、むしろ西山審議官ではないか。
というのも、国民はこれまで、テレビを通じて聞こえてくる西山審議官の言葉に、振り回された挙句、そこに胡散臭さを感じるようにまでなっているからだ。
昨夜は避難地域の見直しに関して、地元の福島県民がインタビューを受けていたが、その中の一人は、政府は正直なことを言わないから信用できないと、はき捨てるようにいっていた。
狼少年ではないが、事実とかけ離れたことをいい続けていると、そのうち誰からも信用されなくなるのは当たり前だ。
それが、危機に瀕している今の日本で、国民を正しく導くべき立場にある政府そのもののしていることだとあっては、国民の不幸も極まれりとしかいいようがない。(写真はEPA)
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