大関魁皇関が、名古屋場所十日目の対琴欧州戦を最後に、現役引退を表明した。日本人としてただ一人大関を張ってきた力士が去るのはさびしい限りだが、ときあたかも同じ日の結びの一番で琴奨菊関が横綱白鵬関を破り、大関昇進をほぼ手中にしたから、新旧交代を見届けてからの引退表明になった。相撲ファンの一人としてこころからご苦労さんといいたい。
相撲が国際化して、多くの外国人力士が横綱や大関になる時代が出現したが、その影で日本人力士がいまひとつぱっとしない情況が続いていた。そんななかでただひとり、日本人として大関を守ってきた。その努力には頭がさがる。
魁皇関は今場所千代の富士関の持っていた通産勝星記録を更新したばかりだった。この大記録の達成と、琴奨菊という後進の出現が引退へと気持ちを向かせたのかも知れない。
最多勝星のほかにも、魁皇関は様々な記録を持っている。幕内出場、幕内在位、幕内成績などで歴代一位であるほか、大関在位65場所も、千代大海関と並んで歴代一位だ。また横綱になった力士以外で5回も優勝したのは天晴れというほかはない。
魁皇関は15歳で相撲界に入り、若貴兄弟や曙関とともに初土俵を踏んだ。それ以来同期の力士が次々と引退していく中で最後まで土俵に踏みとどまったのは、日本人力士として大関を守り抜きたいとする使命感のようなものが働いたからだろう。その踏ん張りが、数々の大記録に結びついたわけだ。
最近は何度も角番に立ちながら、そのたびに気力で乗り切ってきた。そんな姿に相撲ファンの誰もが感動して、熱い応援を投げかけてきた。
とにかくこれでひとつの時代が終わったような気がする。これからは琴奨菊関をはじめとする若い世代にがんばってもらいたい。
ともあれ魁皇関には、あらためてご苦労さんといいたい。(写真は引退会見する魁皇関:朝日新聞から)
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