ロシア人はビールの飲みすぎか

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先日ロシアのメドヴェージェフ大統領がビールの消費に制限を課する法案に署名した。この法案は2013年に施行されるが、その暁には、ビールはスピリット類に分類されたうえ、若者の手に容易に入らないように様々な販売制限が課されるようになる。夜間11時から早朝8時まで全面販売禁止、コンビニでの販売禁止、公園、スポーツ施設、劇場、交通機関内での販売禁止といった措置だ。

ロシア人といえば世界一の呑兵衛大国。その国でアルコールの中心になってきたのは、ウォートカなど度数の強い酒だ。ロシア人は若い頃からこうした強い酒をがぶ飲みする習慣のおかげでアルコール中毒にかかり、若死にするケースが多かった。そんな国で何故、ビールの消費を抑えようとする動きが出てきたのか。

これには涙ぐましいいきさつがある。

ロシア政府は、アルコール中毒の蔓延と若死の増大を何とか抑えようと、強い酒を控えてビールやカクテルなど弱い酒を飲むよう、20年前から国民的な運動に取り組んできた。その結果たしかにビールの消費が伸びて、その分ウォートカの消費が抑えられたが、思いがけないことが同時に起こった。若年層の間で、ビールに対する嗜好が強まり、場所と時間をわきまえずにビールをがぶ飲みする習慣が蔓延したのだ。その結果、アルコール中毒初発年齢の低下という苦い事態に見舞われた。

ロシアでは、7度以下のアルコール飲料は、まともな酒とは認識されず、したがって小学生が飲んでもとがめない。実際最近の統計によれば大部分の子どもたちは10歳未満でビールを飲み始め、10台の若者の82パーセントが、ほぼ毎日のようにビールを飲んでいるという。なんといっても、ビールはオレンジジュースと同じか、それよりも安い値段で売られているのである。

こうした傾向を放置しておけば、ロシア民族は若年の頃からアルコールに依存するようになり、国民の大部分がアルコール中毒が原因で死ぬようになるだろう。ロシアの公衆衛生当局がこのような危機感を覚えたのも無理はないと思われる。

こうしたわけで、ロシアでは国を挙げて、あらたな対アルコール戦争に取り組み始めたというわけなのだ。





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このページは、が2011年7月23日 19:24に書いたブログ記事です。

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