霧の摩周湖といわれるように、摩周湖は年間100日以上も霧に覆われる日本有数の霧の名所だ。多彩な霧の中でも、滝霧といわれる霧は、分厚い雲のような形状の霧が、周囲の断崖から滝のようになって水面に落ちる。そのさまがまるでナイアガラの滝を見ているようだと、誰もが感心する。しかしこの滝霧は年に数回しか見られないことから、幻の霧とも言われている。その霧がどのようにして生まれるのか、NHKスペシャルが追跡報道した。題して「幻の滝 摩周湖 神秘の夏」
摩周湖の霧は非常に多彩だ。その中で、水面から湧き出て雲のように湖を覆う放射霧といわれるものや、崖の斜面沿いを上昇する滑昇霧といわれるものが有名だが、それらは摩周湖が生んだ霧だ。これに対して滝霧は海からやって来る。
番組は滝霧が生まれる場所が三陸沖から釧路沖にかけての海上であることを突き止めた。この海域は親潮と黒潮がぶつかるところで、温度の変化から霧が発生しやすい。条件によっては膨大な量の霧が生まれる。こうした霧が、南風に乗って北上し、釧路湿原を通って北海道内陸部に流れ込み、海から70キロ離れた摩周湖に到達して、壮大な滝霧になるのだという。
海上で生れた霧が陸地に流れ込むと、普通は陸上の熱によって、霧はすぐ蒸発してしまう。釧路に上陸した霧がすぐに消えてなくならないのは、釧路湿原があるためだ。湿原は膨大な水を抱えているため、海からやってきた霧に水分を供給し、霧の勢いを弱めない。そうした霧が霧の道といわれる渓谷沿いを移動して摩周湖に達し、滝霧となるのだ。
だがこの霧もいつまで見られるかは不透明だという。長いスパンで見ると、発生件数が着実に減ってきているのだ。80年前と比較して20パーセント減少したという数字もある。その背景には、この地域の気温が1.3℃上昇したという事実がある。地球温暖化の影響とも考えられる。
番組は最後に、近年まれに見る壮大な規模の滝霧を捉え、その様子を一部始終記録していた。
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