8月6日にロンドンで始まった暴動は他の大都市にも拡大し、これまで(12日まで)に1200人が拘留される事態に発展した。夏休み中だったキャメロン首相は、事態の鎮圧を図るため、休暇を返上して陣頭指揮に立っている。なにしろ来年にロンドン・オリンピックを控え、安全に疑問が出るようなら、国の威信にかかわるとあって、徹底的な鎮圧に向けて断固たる姿勢を示している。
ここで鎮圧という言葉を使ったのには理由がある。キャメロン首相は今回の騒ぎを、ごろつきどもによる憂さ晴らしだと見ているのだ。そんな連中には力を以て臨まねばならぬというわけだ。
国会の論戦の中で、野党側から、失業者の増大などによる政治的な不満の増大や歳出予算のカットによって警察力が低下していることなどが背景にあるのではと指摘されたが、キャメロン首相はそうした意見を一蹴した。
そして「これは貧困をめぐる問題ではなく、カルチャー(社会の風潮)をめぐる問題だ」と述べ、「暴力を賛美し、権威に対する侮蔑姿勢を示し、権利についてはあれこれ主張するが、責任については何も言わないような現在のカルチャーだ」と批判した。(以上WSJ日本語版からの引用)
それゆえ、こうした風潮を助長している社会的な要因にメスを入れなければならないというわけだ。
暴動を速やかに鎮圧する手法としてキャメロン首相が言及しているのがギャング・インジャンクション(ギャング行為差し止め命令)というものだ。これはギャング行為を事前に防止するための措置で、いかがわしい連中に集会やデモなどを禁止することができる。
このほかキャメロン首相が注目しているのは、ソーシャルメディアの取り締まりだ。ツィッターやフェイスブックといったソーシャルメディアが巨大な社会動乱を引き起こすエンジンになることは、アラブの春が実証済みだ。これと同じことがイギリスで起こらないとは限らない。だから事前にそれらの動向に目を光らし、必要に応じてメディアを遮断することも考えるべきだ。こういうのだ。
ここまでいくと、キャメロン首相の政治手法とアサド大統領の政治手法とをどこで区別できるか、わからなくなろうというものだ。
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