ギリシャのデフォールト危機に見る茶番劇

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再燃したギリシャのデフォールト危機が何とか回避されそうな見込みだ。メルケル、サルコジ、パパンドレウの三者が電話会議を行い、一定の道筋を示したからだ。ギリシャをユーロ圏内に引き止めることを前提に、独仏が必要な支援を行う代わりに、ギリシャは財政再建に真剣に取り組むという内容だ。

こんな声明を聞かされると、なんとなく納得してしまいそうだが、そんなに簡単なものではない。ギリシャをめぐる危機的構造は、昨年と全く変わっていないし、むしろ悪化さえしている。

パパンドレウがいうような財政再建策が成功する見込みは全くないといってよい。それどころか増幅された形で再燃する可能性が極めて高い。

ギリシャのデフォールト危機の本質は、かつての日本の多重債務者とほとんど同じだ。非常に高い利息で金を借りているために、返済に首が回らない。そのために他のサラ金から、やはり高い利子のついた金を借りて一時しのぎをするほかはない。そんな悪循環が国の財政を蝕んでいるわけだ。

あまり報道されることはないが、ギリシャ政府が発行している債権は信用不安のために暴落して、その結果すさまじい利子負担が生じている。返済の時期が来て、それを返したくても、安い金はどこからも借りられない。かといって、返済をサボタージュすると、デフォールトという形での破産が避けられない。ここで独仏が援助の手をさしのべようということだが、メルケルさんもサルコジもそんなにお人よしではない。ギリシャに用立てする金には、やはりすさまじい利子負担がつきまとっているのだ。

ギリシャが本当に債務負担の悪循環から逃れるための道は二つしかない。

ひとつは、ユーロ圏にとどまることを前提に、パパンドレウが約束したような財政再建策を完全に実施することだ。こうすればギリシャの信用が回復して、公債の値段も上がり、その結果メチャクチャな利子負担をする必要もなくなって、財政赤字も解消する。ギリシャはめでたく再建されるというわけだ。

もうひとつは、ユーロ圏から脱退し、国民に対してインフレ政策を実施することだ。インフレの結果、国家財政は国民の実質的な負担を犠牲にして回復される。財政は一時的には破綻するが、国家はまたゼロから出発することができようというものだ。

しかし今回の枠組みは、このどちらをも回避しようというのだから、虫のいい策といわねばならぬ。しかしそんな虫のいいやり方がいつまでも通じるわけはない。ギリシャはまたぞろ危機に陥る、これは確実にいえることなのだ。

こんなリスクがあるにかかわらず、独仏とギリシャは何故、上述のような策を選択したのだろうか。

独仏にとって、ギリシャのような小国でも、その破産は結構な痛手になる。独仏の金融機関は巨額のギリシャ国債を保有しているので、ギリシャが破産すればこれらの金融機関の破綻にもつながりかねず、それがリーマンショック型金融危機を引き起こして、ユーロ圏全体の危機まで招きかねない。ギリシャをユーロ圏から脱退させるという選択を選んだとたんに、この危機は現実化するだろう。

ギリシャにとっても、ユーロ圏にとどまっている限りは、何とかかんとか言われながらも、結局は独仏が助けてくれる。こんな思惑があるのだろう。

こうして、三者の思惑が一致したことで、今回のデフォールト危機はとりあえず回避されたわけだ。三者とも、ただの延命策とわかっていながらこんなことをしたのは、時間稼ぎとしかいいようがない。あるいは茶番劇といってもよい。

繰り返すが、本質的な問題は何も解消されていない。それ故、この問題が再燃するのは必至のことだと言えるのだ。(写真はロイターから)

参考記事:
ギリシャの財政破綻とユーロ圏の経済危機
ストライキ社会ギリシャ:財政破綻の原因





≪ 米国債の格下げ | 経済学と世界経済 | ギリシャ救済プラン国民投票に:逡巡するパパンドレウ ≫

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このページは、が2011年9月15日 20:09に書いたブログ記事です。

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