万里一空の境地を目指して:琴奨菊関の大関昇進

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大相撲秋場所は惨憺たる光景からはじまった。東京では8か月ぶりの開催にもかかわらず、初日から客入りは悪く、連日半分しか埋まらぬ客席を前にして取り組みがなされたのは、八百長問題でタガが緩んだ相撲協会に対する世間の目がいかに厳しいものであったかを物語っていた。

しかし日が経つとともに、客足が戻るようになり、千秋楽前には5日間連続で満員御礼を記録した。相撲ファンを呼び戻すような動きがあったからだ。

関脇の琴奨菊が優勝に絡む活躍をし、また稀勢の里も白鵬を破るなど、日本人関取の活躍が、相撲ファンの関心を掻き立てたのだ。

琴奨菊は最終的に12勝3敗の成績をとって、大関昇進を果たした。先場所魁皇が引退したことで、今場所は横綱大関の地位に日本人力士が一人もいなくなるという過去に例のない事態が生じていたのが、これで解消される。

今場所客の入りが悪かったことの大きな理由は、無論八百長問題に現れた協会の体質に人々が愛想を尽かしたということだろうが、それと並んで、いやそれ以上に、日本人力士の横綱や大関のいない土俵にファンが夢中に馴れなかったこともあっただろう。

相撲の世界における国際化の流れはいまや動かしがたいものがあり、それはそれで相撲の人気を高めていくうえで欠かせない要素だとは思う。しかし、横綱や大関に日本人力士が一人もいなくなるというのは、やはりちょっと困った事態だ。相撲は何と言っても、日本らしさが最も良く表れている競技なのだから、その競技者に日本人がいないのでは話にならぬ、大勢の人はそう感じているに違いない。

そこへ、琴奨菊の大活躍があって、二場所ぶりに日本人大関の復活が実現する。また、稀勢の里、豊の海と云った日本人力士も土俵を大いに盛り立てた。こうした事態があったからこそ、いったん相撲に愛想を尽かした人々が、再び国技館に戻ってきたのだといえなくはない。

なお、大関昇進の推挙をうけた琴奨菊関は、使者に対して「大関の地位を汚さぬよう『万理一空』の境地を求めて、日々、努力、精進致します」と応えたそうだ。

『万理一空』とは宮本武蔵の言葉だ。琴奨菊はそれを、「どんな努力も目指す先は一つ、目標を見失わずに努力を続ける」という意味で使ったそうだ。(写真は共同通信から)





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このページは、が2011年10月 1日 19:13に書いたブログ記事です。

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