豊穣たる熟女たちと新橋のガード下を覗く

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先日豊穣たる熟女たちと新橋で飲んだ帰りにガード下を覗いて歩いたことがあったが、その際に、次回は是非こんなところで飲んでみたいわと熟女たちが口を揃えていった。そこで9月の22日に設定したのだったが、その日は例の台風騒ぎの翌日で、彼女たちは疲労困憊の様子だった故、とりあえず延期することにしたのだった。そんなこんなで、秋の気配が深まる頃になってやっと、4人で新橋のガード下を、よさそうな店を探して覗き歩くことになった。

新橋のガード下のもっとも新橋のガード下らしいたたずまいは、吹きさらしの路上に粗末な卓と椅子を並べた上に、人々が肩を寄せ合いながら焼き鳥を食い、焼酎を飲むところにある。そこで我々は、新橋駅から有楽町駅の方向に向かって、ガード下の店を逐次点検して歩いたのだが、なかなか理想的なシチュエーションに恵まれなかった。そのほとんどは、路上ではなく室内の空間に人を座せしむる類のものだったのだ。

有楽町駅の近くまで歩くと、ガード下の東西を結ぶ狭い通路があって、その通路の壁に沿うように露天風の飲み屋が固まっている一角がある。昔からある界隈で、筆者も若い頃はよくお世話になったところだ。その中に「登運とん」なる店がある。今宵はそこに入った。というより、店には入口などはなく、したがって扉もないことから、立ち止まった、あるいは止まり木に止まった、といったほうが良いかも知れぬ。

時間はまだ6時を過ぎたばかりだが、この界隈にはすでに人の姿が充満している。その充満した人々が、焼酎のジョッキを片手に、焼き鳥の串をもう片手に持って、お仲間たちと和やかに談笑している。筆者もさっそく、生ビールで熟女たちと乾杯し、楽しい談話にひと時を過ごしたというわけだ。

T女が職場の近況を報告してくれた。Bさんには最近3人目の子どもが産まれ、Yさんの腰の角度は90度を割り、Fさんはぐうたら亭主に貢ぐのをやめると宣言したそうだ。

おいおい、Bさんはいくつになったんだい。そんなに若いとも思えなかったけれど。筆者がこう尋ねると、今年57歳になりますのよ。ハズバンドがいいますには、こういうことには年の多寡は関係ないんですって、とT女が答える。Bさんは80までがんばるといっていますわ。わたしたちもがんばらなくちゃね。

今日はハズバンドときましたね。でも厳密にいうならマイをつけて、マイ・ハズバンドといったほうがいいよ、と筆者が返す

いつもの通りの会話とは言いながら、こんな具合だ。

うちのところは最近人の入れ替わりが激しくて、あなたが知ってる顔はほんの一部になってしまいました、とY女がいう。僕は毎日の通勤で君の職場を通りがかるけど、たしかに知らない顔が増えたようだね、と筆者は答える。

M女はM女で、私のところも常に人手不足に悩んでいますわ、と訴える。しかし今の筆者には、そういわれて何とかできるというわけでもない。

でもここは面白い雰囲気ですねと、三人口を揃えていう。たしかにそうだよ、と筆者はいう。しかも安くてうまい店が並んでいる。懐具合のよくないサラリーマンでも安心して入ることができる。僕も若い頃は、職場がこの近くにあったこともあって、ほとんど毎日のように、この界隈を飲み歩いたものだよ。

こんな雰囲気を残した飲み屋街は、ココのほかには新宿の小便横丁があるくらいだ、筆者がかさねてそういうと、本当にそんな名前の横丁があるんですかと、3人そろって不思議がる。横町全体に共同トイレがひとつしかないので、我慢ができずに立小便するやつが絶えないんだ、そこからこんな不名誉な名前がついたのさ、と講釈をすると、三人とも疑い半分の表情で聴いていた。

こんな調子で談笑していると、あっという間に時間が過ぎる。今日は是非梯子酒をしましょうよ、とあらかじめ申し合わせていたので、この店は適当に切り上げて、再び新橋方向に戻り、すしざんまいというすし屋に入った。いつかこのメンバーで入ったことのある築地のすしざんまいの支店だ。本店と同じく、いいネタを使っている。

ここですし数種と茶碗蒸を頼んだ。T女などは先ほどの店でたらふく詰め込んだおかげで、もう入る余地がありませんといっている。筆者にはまだ、数カン入る余地があった。中トロとアナゴの蒲焼がうまい。

9時を過ぎたところで席をたった。戻りの道は銀座側を通った。このあたりの景色を見るのは数年ぶりだったが、そのあいだにすっかり風景が変わってしまっている。反対側がいまだに戦後のドサクサのイメージを保存しているのに対して、こちら側はすっかり近代化、というか欧化されてしまったという感じだ。

並んでいる店がみな洒落ている。ロンドンのパブを思わせるクラシックな外観の空間に、若い男女が気軽な雰囲気を楽しんでいる。イタリア風の店やパリ風の店もある。無論和風の店もある。こんなところは、東京中を探しても、他には見つからないのではないか。

じゃあ次回はこの界隈で飲むことにしようよ、筆者がそういうと、是非この辺で忘年会をしましょうよ、と熟女たちが答えた。





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このページは、が2011年10月15日 20:12に書いたブログ記事です。

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